過去の紙カルテは取り込まない!エムズ歯科クリニックが実践した電子サブカルテ「Medical Box Note」への移行

紙カルテの電子化を検討する一方で、過去のカルテをどのように移行すべきか、お悩みの医院様は少なくありません。
医療法人社団翔舞会 エムズ歯科クリニック様は、過去の紙カルテをデータとして取り込むことなく、電子サブカルテ「Medical Box Note」の運用を開始するという方法を選択されました。
今回は、同院の事務長 森田英明さんに、その具体的な移行プロセスと運用のポイントについて詳しくお話を伺いました。
- 課題
- 膨大なカルテを削減したい
- カルテ出しにかかる業務を効率化したい
- 解決策
- 電子サブカルテ「Medical Box Note」の導入
- 効果
- カルテ出しの作業がゼロに
- カルテの保管スペースが圧縮された
- 院内の業務効率化に寄与
過去のカルテをスキャンしない方針で移行
Medical Box Noteへの移行にあたり、過去のカルテは取り込まないという方針で進められたそうですね。その理由を教えていただけますか。
当クリニックでは、本院の東中野医院だけでも約30,000枚のカルテがあり、分院を合わせた10クリニック分のカルテを全てMedical Box Noteに取り込むのはかなりハードルが高いと考えていました。
また、カルテの保管期限は5年と定められており、その期間は保管しなければなりません。どちらにせよ院内にカルテを置いておくのであれば、わざわざ取り込む必要はないと判断しました。
医療法人社団翔舞会エムズ歯科クリニック 事務長 森田英明 様
紙カルテと電子サブカルテ「Medical Box Note」を半年間併用して段階的に移行
過去のカルテは取り込まないということで、どのように運用を進めたのでしょうか?
紙カルテとサブカルテを半年間併用し、移行作業を進めました。
この期間中は、従来通りのカルテ出しも行いつつ、Medical Box Noteにも情報を登録していくという、二重運用の体制をとりました。
定期的に通われている患者さんであれば、ほとんどの方が半年以内に一度は来院されます。そのタイミングで情報を電子サブカルテに移行すれば、自然と切り替えが進むと考えました。
また、長期間来院されていない患者さんのカルテについては、保管期限である5年が経過したら順次破棄する計画です。
毎年1回破棄作業を行っていますので、5年経てば不要な紙カルテが整理され、保管スペースにも空きが出てくると見込んでいます。
Medical Box Note導入プロジェクトチームの立ち上げ
導入まではどのような流れで進めたのでしょうか。
当クリニックでは、最初に事務長である私と受付のメインスタッフが中心となり、プロジェクトチームを結成しました。
また、いきなり導入するのではなく、最初にMedical Box Note導入によるメリットとデメリット、想定される運用上の課題を徹底的に洗い出しました。
その上で、ストランザさんと協議を重ねて、それらの課題が解決可能であることを確認できた段階で、正式に導入を決めました。
この時に「やるか・やらないか」から議論を始めてしまうと、どうしてもスピード感が落ちてしまいます。
そのため私がリーダーとして、まず「やる」と決めて、そのうえで実行するために「必要なことは何か?」を議論していくようにしています。
具体的にプロジェクトチーム内ではどのようなことを議論されたのでしょうか。
1つ例を挙げると、患者さんの状況把握についてです。紙カルテの場合、カルテの物理的な受け渡しによって、患者様が「診療中」「会計待ち」など、どの段階にいるのかを把握できます。
しかし電子化すると、その情報がiPadの中に集約されるため、一目で状況を把握しづらくなるという懸念がありました。
そのため、受付での患者様の状況(来院、診療中、会計待ちなど)をどのように把握するのか、またそれに伴うお薬の受け渡しフローはどう変わるのか。こうした細かな点までシミュレーションを重ね、ストランザさんとも相談しながら最適な運用方法を検討していきました。
※アポツール内の「来院状況」画面では、患者さんのステータス(例:治療中、会計待ち)が確認できる
導入の決定後、スタッフへの周知や教育はどのように行いましたか。
まずマネージャークラスのスタッフに導入決定の旨を共有し、その後、実際にシステムを利用する受付スタッフに定期勉強会を通じて周知しました。
その際には、今後の導入ステップや業務の変更点などをスライドにまとめ、丁寧に説明することを徹底しました。
「聞いていない」「やりたくない」といった反発を招かないよう、最初の説明は非常に重要だと考えています。
実際に説明会で使用された資料
同時に、「半年後にはカルテを探し出す作業がゼロになる」というように、導入によって得られる具体的なメリットを伝え、スタッフが前向きになれるような未来を示すことも大切にしました。
まずは1クリニックで約1ヶ月間の試験運用からスタート
周知された後はどのように進めていきましたか。
まずは1クリニックに絞り、約1ヶ月間の試験運用を実施しました。この期間は、実際の現場で発生した不具合や困りごとを徹底的に洗い出すフェーズと位置づけていました。
1クリニックで発生する課題は、他のクリニックでも必ず共通して起こり得ることです。だからこそ、この試験運用の段階で解消しておくことが、その後の全クリニック展開を成功させる鍵になると考えました。
試験運用で得られた課題とそれに対する解決策が固まったところで、他のクリニックへの展開を進めていきました。
もちろん、中にはシステムの仕様上、どうしても解決できない問題もあります。それはシステムの仕様にあわせて業務を最適化していきました。
誰もiPhoneの仕様についてApple社にクレームを言わないですよね。それと同じで「このシステムはこういうものだ」と受け入れ、新しいルールに慣れてもらうようにしています。
訪問診療のカルテデータもMedical Box Noteに移行
訪問診療のカルテはどのように移行されたのでしょうか。
外来診療とは対照的に、訪問診療では過去のカルテもMedical Box Noteに取り込みました。当然ながら、訪問先では院内のように紙カルテをすぐに参照できないためです。
一方で、ケアマネージャーさんや施設にお渡しする書類など、どうしても紙で必要なものは、無理に電子化せず、専用ファイルで管理しています。
Medical Box Noteの導入による効果は絶大!紙カルテには絶対に戻れません
ここまで移行作業についてお伺いしてきましたが、Medical Box Noteの導入効果はいかがでしょうか。
導入による効果は絶大です。ペーパーレスになったことで、デメリットは一つもなく、もう紙カルテには絶対に戻れません。
特に訪問診療においては、カルテを物理的に持ち出す必要がなくなり、紛失リスクもなくなるなど、安全面でも非常にメリットを感じています。
良いことしかないので、むしろ「もっと早く導入しておけばよかった」と感じています。現場スタッフからも同じ声が多く、全く問題なく運用できていますね。
現在は導入から約2年が経過し、カルテ出しの作業もなくなり、カルテの保管スペースも圧縮されました。
ただし、インプラントなど自費診療の患者さんに関しては、過去の紙カルテを確認する必要が出てくるケースもゼロではありません。そのためすべてを廃棄するのではなく、必要に応じて確認できるように保管は続けています。
スタッフさんの業務負担の軽減にはつながっているでしょうか?
受付スタッフの業務負担はかなり軽減されたと思います。当クリニックでは以前からコールセンターや滅菌センターを設置するなど、全スタッフが診療に専念できる環境づくりを徹底してきました。
そうした様々な業務効率化の取り組みの中でも、今回のMedical Box Noteの導入は非常に大きな影響を与えたと実感しています。
東中野医院での撮影時には理事の荒井昌海 先生にもご挨拶させていただきました
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移行で最も重要なのは「事前準備」
非常に参考になるお話をありがとうございます。最後に電子カルテ導入を成功させるために、最も重要だと感じる点は何ですか?
電子カルテ導入の成否を分けるのは、ひとえに切り替えまでの事前準備に尽きると考えています。
現場のスタッフに二度手間や無駄な作業をさせないように、導入前に考えられるあらゆる事態をシミュレーションし、課題を解消しておくことが大切です。
この準備が不十分なまま進めてしまうと、現場は混乱し、反発が生まれます。導入がうまくいかないケースのほとんどが、このパターンではないかと思います。
またストランザさんにお願いしたいのが、システムの提供だけでなく、導入までに必要なステップや準備物などについても明確に提示していただきたいということです。
例えば、推奨するiPadの機種や台数、訪問診療で使う際のネット回線はどこと契約すれば良いか、どうやって進めれば良いかなどを自分達で考えるのはハードルが高いです。
そうした情報を提供してもらえるとクリニック側は導入を検討しやすくなるのではないでしょうか。
まさにそのようなご要望をいただきまして、Medical Box Noteの導入に関するセミナーを実施する予定です!
※2025年5月末に実施いたしました。アーカイブ動画は以下からご覧ください。
とてもいいですね!考える余裕があるクリニックなら自己解決も可能ですが、日々の診療に追われる中、ゼロから情報を集め、計画を立てるのは負担が大きいですよね。
結局のところ、導入が難しいのではなく、「何からやるべきか」「どういう順番でやるべきか」が分からないだけなのです。
そのプロセスをメーカー側が分解して、分かりやすくガイドしていただけると導入がスムーズになるかと思います。
なにはともあれ、Medical Box Noteは絶対に導入すべきツールです。そのため、「必ず導入する」という強い意思を持って、徹底した準備のもとで推進することをおすすめします。
エムズ歯科クリニックの荒井先生、森田さん、ご多忙のところ誠にありがとうございました。導入を検討されている医院様にとって、大変参考になるお話でした。また、いただきました貴重なご提言を元に、私どものサービス改善に努めてまいります。
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エムズ歯科クリニック
森田英明 様
東京都・神奈川県
ユニット数:55
課題・目的
ペーパーレス業務効率
導入機能
デジタルサブカルテ「Medical Box Note」