歯科医師のリタイア年齢は何歳？開業医・勤務医など働き方別で解説
歯科医師として長年培ったキャリアの終わりには、リタイアという新たな人生の転機が訪れます。定年制度が明確でない業界ゆえに、引退年齢は開業医と勤務医で異なり、選択肢も多様です。
この記事では、歯科医師のリタイア年齢と、引退前に知っておくべき要点を解説し、充実したセカンドライフを迎えるための一助となる情報をお届けします。ぜひご一読ください。
目次
働き方別にみる歯科医師のリタイア年齢
歯科医師には明確な定年制度が存在しないため、リタイア年齢は各々の働き方やキャリアの選択に大きく左右されます。しかし、統計データからは、多くの歯科医師が活躍を続ける年齢層を推測できます。
ここでは、統計データ※1を基に、開業医※2と勤務医それぞれのリタイア傾向を分析し、引退を見据えた歯科医師が考慮すべき要点を整理します。
※1参照：令和4（2022）年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
※2：「診療所に勤務＝開業医」として想定した場合の算出
開業医のケース
開業医の平均年齢は54.8歳
日本国内における開業医の平均年齢は54.8歳とされ、この年齢層が地域医療の基盤として尽力している現状が浮かび上がります。
経験と技術を培い、患者さんからの信頼も厚いこの世代は、次世代の歯科医師たちへの橋渡し役として重要な役割を担っているといえるでしょう。
開業医のリタイア年齢は70歳前後
診療所（主に開業医）に従事する歯科医師の年齢構成を見ると、以下のような特徴が見られます。
- 60〜69歳の層が最多で、22,591人（25.0%）を占めている
- 70歳以上の開業医も12,719人（14.1%）と、相当数にのぼる
特に注目すべきは、70歳を超えてもなお診療を続ける歯科医師が全体の14.1%に達する点です。
これらのデータから、多くの開業医が70歳前後まで現役として診療に従事している様子が伺え、歯科医師の高齢化が進んでいる現状が示唆されます。
勤務医のケース
勤務医の平均年齢は45.8歳
日本において、病院（医育機関附属の病院を除く）で勤務する歯科医師の平均年齢は45.8歳とされています。
一方、医育機関附属の病院に勤務する歯科医師の平均年齢は36.8歳で、30〜39歳の年齢層が最も多くを占めています。この結果から、医育機関附属病院で働く勤務医が比較的若い年齢層に集中していることが明確でしょう。
勤務医の年齢層が若年層に偏っている理由としては、40歳前後で独立開業や他分野への転身といった新たなキャリアの選択肢を模索する歯科医師が多いためであると考えられます。
勤務医のリタイア年齢は60～65歳
歯科医師が公務員として勤務する場合、定年は原則として65歳と規定※されています。
しかしながら、矯正施設など特定の医療領域で従事する歯科医師には「新特例定年」が適用され、最大で70歳まで勤務が可能※となりました。
一方、民間の病院や診療所に勤務する歯科医師に関しては、厳密な定年制度が設けられていないか、60歳に設定されていることが一般的です。
しかしながら、多くの医療機関が再雇用制度を導入しており、実質的には65歳頃※2まで現役の勤務医として継続勤務できる環境が整っています。
※参照：「地方公務員法の一部を改正する法律について」「人事院｜第1章 定年後を考える」
歯科医師のリタイア前に考慮すべき課題とは
歯科医師がリタイアを迎える際、経営や資金計画などさまざまな準備が必要です。ここでは、特に開業医と勤務医がそれぞれが直面する課題に焦点を当て、リタイア前に計画すべきポイントをまとめました。
開業医が直面する課題
経営後継者の問題
開業医がリタイアを迎える際に直面する最大の課題のひとつは、後継者をどのように確保するかという問題です。
日本歯科医師会の調査（2020年3月）によれば、歯科医院の管理者の約9割が「将来の後継者が決まっていない」または「後継者が全くいない」と回答しています。この現状は、数多くの歯科医院が廃業の危機に瀕していることを示唆しています。
歯科医師の平均年齢が上昇し、50歳以上の歯科医師が約60％※を占める今、経営後継者を確保するには親族以外の第三者への承継も視野に入れる必要があるでしょう。
適切な後継者を見つけるためには、十分な時間を確保し、技術と経営の両面で医院を支えられる人材を見極める能力が求められます。
単なる技術力だけではなく、経営能力を持ち合わせた後継者の選定が、医院の将来を左右する鍵となるでしょう。
※参照：令和4（2022）年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
▼こちらのコラムも要チェック！
閉院に向けた計画
閉院を選択する場合は、患者さんへの通知や、医療機器や設備の処分・売却、スタッフの再就職支援など、多くの手続きが必要になります。
閉院を決定した場合でも、患者さんに対しては丁寧に引継ぎを行い、リタイア後のフォローも考慮したプランを立てることが求められるでしょう。また、資産の整理も計画的に行うことが重要です。
借入金の返済計画
歯科医院を開業する際、多くの場合で設備投資や事業資金として借入を行います。リタイアを迎える際、借入金の返済計画は必ず見直す必要があるでしょう。
特に開業医は、退職後の収入をどのように確保するかを事前に検討し、残りの借入金をどのように返済するかを明確にしておくことが大切です。
これには金融機関との調整も必要になる場合があるため、早めに対応されることが望ましいです。
開業医・勤務医が共通して直面する課題
引継ぎに関する調整
リタイア前に最も重要な課題の1つは、役職や患者さんの引継ぎです。開業医も勤務医も、リタイア後に誰が後を継ぐのか、また患者さんの治療がどのように引き継がれるのかをしっかりと調整する必要があります。
特に患者さんに対しては、スムーズな治療の継続を保証するために、信頼できる後継者が必要です。また、スタッフの処遇についてもきちんとした計画を立て、リタイア後も円滑な運営が続くよう配慮しなければなりません。
リタイア後の資金計画
歯科医師がリタイアを迎えるにあたり、収入源の喪失は避けがたい課題です。公的年金や貯蓄の取り崩しが一般的な手段ですが、それだけでは資金が不足することも少なくありません。
リタイア後に備えて、早い段階からiDeCoや小規模企業共済に加入し、計画的な積立を始めることが重要です。特に若い年齢からの資産形成が、引退後の経済的余裕を確保し、ゆとりある生活を支える基盤となるでしょう。
人脈の構築
リタイアを見据えた場合、歯科医師として築いてきた人脈はその後の活動において計り知れない価値を持ちます。
業界内での広範なネットワークを構築しておくことで、引退後に新たな挑戦を始める際や、他のビジネスへ参画する際に大きなアドバンテージとなるでしょう。
リタイア前から積極的に業界のイベントや勉強会に参加し、年齢を超えて築く信頼関係が、将来の活動をより豊かなものにしてくれます。
新たなるスキルの習得
歯科医師がリタイア後も充実した生活を送るためには、歯科医療の技術だけでなく、新たな分野のスキルを早めに身につけることが肝要です。
例えば、後進育成のための教育スキルや、講演でのプレゼン技術などは、人脈拡大にもつながります。
若い年齢からこうしたスキルを培うことで、リタイア後の第二のキャリアの礎となり、自身の専門性を生かしながら視野を広げ、リタイア後の人生をより充実したものにできるでしょう。
歯科医師のリタイア後の求人について
歯科医師としてリタイアを迎えたあとも、経験と知識を活かせるキャリアは数多く存在します。年齢や体力の変化を踏まえた柔軟な計画を立てることで、新たな働き方への移行をスムーズに行いましょう。
非常勤や嘱託での勤務
歯科医師がリタイア後に選択する働き方として、非常勤や嘱託勤務が挙げられます。
非常勤の求人は即戦力として期待されるケースが多く、特に60歳を超えた年齢の歯科医師であっても、経験豊富であれば採用される機会が少なくありません。
一般的には、リタイア後も週数回のペースで非常勤として働き続けることが多く見られます。
歯科関連企業でのコンサルタントやアドバイザー職
開業医や勤務医として培った豊かな臨床経験は、経営やマーケティングにおいても貴重な資産となります。
年齢を重ねた歯科医師が後継者育成や新規事業の計画立案に携わることで、歯科医療界の発展を支える一方で、自身の経験を社会に還元する意義深いキャリアといえるでしょう。
講師業
経験と年齢を重ねた歯科医師にとって、歯科大学や歯科衛生士学校での講師職も有望です。開業医として培った経営や臨床の知識は、次世代の歯科医療従事者を育成する上で欠かせません。
講師業は、後継者を育てる一方で、自身の知的活動をリタイア後も続ける手段となります。自らの臨床経験を講義に取り入れることで、学問と実務の橋渡しを担い、社会貢献にもつながることでしょう。
▼こちらのコラムも要チェック！
まとめ
歯科医師のリタイア年齢は、開業医では70歳前後、勤務医では60〜65歳が一般的です。
リタイアに向けては、後継者選定や閉院計画、資金計画などの準備が不可欠です。また、リタイア後の柔軟なキャリア設計には、スキル習得や人脈構築も重要となります。
リタイアの課題に対応するには、効率的な医院運営が求められます。「Apotool & Box for Dentist」は、予約管理からデジタルサブカルテまで、歯科医院の業務を一元管理するクラウドシステムです。
経営分析機能も備えており、リタイアに向けた計画立案にも役立ちます。「Apotool & Box for Dentist」導入により、業務効率化と経営の可視化が実現し、リタイアに向けた準備がスムーズになることでしょう。
- Apotool & Box サポートセンター
- 平日 10:00~18:00
Tel：03-6403-4880
お問い合わせフォームはこちら
