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【歯科衛生士の離職率を下げたい】定着率向上のための施策を解説

コラム

歯科医療界における歯科衛生士の離職率は深刻な課題となっています。それは、業界全体にとって大きな懸念材料です。

そこで今回は、歯科衛生士を離職に追いやってしまう理由やその影響、そして定着率を向上させる8つの対策方法を解説します。

この記事では、歯科衛生士たちが長く働き続けられるような、快適な職場環境を構築するヒントをご提案します。

歯科衛生士の離職率の現状


まずは、歯科衛生士の離職率の現状について見ていきましょう。

歯科衛生士の就業者数と「潜在歯科衛生士」の数

歯科衛生士の名簿登録者数は、令和2年度には約30万人にのぼります。しかしながら、実際の就業者数は約14万人にとどまっています。

参考:衛生行政報告例、歯科医療振興財団の調査

このことから、離職中の歯科衛生士、つまり「潜在歯科衛生士」が約16万人も存在することになります。

歯科衛生士の名簿登録者数と実際の就業者数の差は、業界における就業環境の現実を反映しています。就業者数が登録者数よりも少ないことは、離職率の高さや働きづらさを示唆しているのではないでしょうか。

上記のデータからは、資格を持ちながらも歯科衛生士として就労していない人の中には、業界に興味を持ちながらも、働く環境や待遇の面で不満を抱えている可能性があることが読み取れます。

歯科衛生士の離職率は70%超え

令和2年に実施された「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によれば、歯科衛生士の76.4%が1回以上の転職を経験しています。また、そのうち50%以上は複数回の転職をしているという結果が示されました。

つまり、就業している約14万人の歯科衛生士のうち、約11万人が転職経験を持っていることになります。

歯科衛生士の離職率が高い理由


歯科衛生士が歯科業界に戻ってこない背景には、以下のような理由が挙げられます。

理由1:結婚や出産、介護など家庭の事情

歯科衛生士の職場における就業者はほぼ女性で占められており、その割合はなんと99%※にものぼります。

参考:令和2年3月 公益社団法人 日本歯科衛生士会 歯科衛生士の勤務実態調査 報告書

女性の人生における結婚、出産、子育てなどといったライフステージの変化や、それに伴う引っ越しなどは、離職の理由の1つに挙げられます。

理由2:人間関係

歯科衛生士の退職理由のうち、「育児・出産」に次いで多い退職理由は「人間関係」です。

参考:令和2年3月 公益社団法人 日本歯科衛生士会 歯科衛生士の勤務実態調査 報告書

歯科医療はチームワークや協調性が求められる業界ですが、院長や同僚との関係がうまくいかないと感じる歯科衛生士は一定数存在します。

周囲のスタッフや院長との価値観の相違、場合によってはハラスメントを受けたりなど、日頃の関係性が居心地の悪さを生む原因となることがあります。

理由3:労働環境

歯科衛生士は、ストレス過多や過労状態に陥りやすい傾向にあります。

人手不足の歯科医院で働くことが多く、また患者の急な予約変更や急患の対応など臨機応変な対応を求められることも日常茶飯事です。

さらに、長時間の拘束時間も問題視されています。診療の前後の準備や後片付けを含めると、1日の拘束時間が12時間に及ぶことも珍しくありません。

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理由4:給与・待遇への不満

歯科衛生士の平均年収は約370万円です。仕事内容の責任の重さに比べて、給与が低いという不満も見られます。
参考:求人ボックス 給与ナビ

女性全体の平均年収は約350万円なので、それに比べるとあまり差がないように思われるかもしれません。しかし、実質的な拘束時間の長さや、エアロゾルなどの感染リスクも加味した責任の重さを考えると、待遇面で不満が残る歯科衛生士が多いのも現実です。
参考:求人ボックス 給与ナビ

経験と実績によって給与が上がるケースもありますが、歯科衛生士全体の給与水準は改善の余地があると考えられます。

理由5:有効求人倍率の高さ

一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会がまとめた歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告によると、2022年度における就職者に対する求人倍率は22.6倍という驚異的な数値を誇ります。

この数字はつまり、1人の歯科衛生士に対しておよそ22件の求人があることを指しており、極端な売り手市場となっていることが読み取れます。

このように、歯科衛生士は応募に対する求人の数が多い状況です。転職に対する心理的ハードルが下がることもあり、、離職率が高まる一因となっています。

理由6:他業種への興味

歯科衛生士は手先の器用さとコミュニケーション能力が求められる職業です。そのため、手先の器用さを活かしてエステやネイルアーティストに転身したり、またコミュニケーション力を活かして営業職に転職したりするケースも見られます。

離職率の高さがもたらす影響


歯科衛生士の離職率が高いと、職場ないしは歯科業界に対してどのようなネガティブな影響があるのでしょうか。

影響1:既存スタッフのストレス増加

歯科衛生士は患者の予防処置や診療補助だけでなく、歯科器材の在庫管理や教育指導、受付など幅広い業務があります。

さらに、基本的には立ち仕事であることや、患者の不安や痛みに寄り添う必要があることを考えると、精神的・身体的な負担は大きいと考えられます。

これらの負担が高まる中、慢性的な人員不足に加え、貴重なスタッフの離職が増えると、残されたスタッフの負担が一層増すのは想像に難くありません。

影響2:歯科衛生士としてのキャリアの不透明化とスキルアップの機会損失

歯科衛生士の離職率が高いことは、同時に定着率が低いとも捉えられます。歯科衛生士の定着率が低いと、新入社員にとってロールモデルとなる先輩歯科衛生士がいない場合があります。

これにより、キャリアパスが不透明になり、スキルアップや専門性の向上を図る機会が制限されることも、離職率の高さが及ぼす悪影響の1つと考えられます。

影響3:既存患者の不満や不信増加

スタッフの離職が頻繁に起こると、通院している既存患者さんからの不信や不満が生じる可能性があります。

歯科衛生士は、患者さんとの信頼関係を築く重要な役割を果たしています。そのため、担当していた歯科衛生士が突然辞めてしまうと、患者さんの不安や転院の意思が生まれることもあります。

これらの要因が重なり、歯科衛生士の離職率が上昇することで、歯科医療の質や患者のアクセスに影響を及ぼす可能性があります。そのため、業界全体として、歯科衛生士の働きやすい環境の整備や、給与・キャリアの見直し、職場環境や人間関係の改善など、離職率の低下に向けた取り組みが必要です。

影響4:歯科業界の需要と供給の不均衡

歯科医療の需要が高まる中、歯科衛生士の需要も増加しています。しかし、歯科衛生士の求人倍率の高さを考えると、人材の供給が需要に追いついていないのが現状です。

特に、地方や僻地などの一部地域では、歯科衛生士の不足が深刻化しています。

【離職を防ぐ】歯科衛生士の定着を促す8つの対策方法


歯科衛生士の離職を防ぎ、より長く働いてもらえる環境を整えるための具体的な対策をご紹介します。

対策1:既存スタッフ間のコミュニケーションを増やす

歯科衛生士の退職理由として多く挙げられるのが、「人間関係」です。そのため、院長を含む全てのスタッフが良好な職場関係を築く必要があります。歯科医院では患者とのコミュニケーションが不可欠ですが、同様にスタッフ同士の情報交換にも注力しましょう。

例えば定期的なミーティングを開催し、スタッフ同士の連携を強化したり、お互いの役割を理解し合ったりすることで、スタッフ同士のチームワーク向上が図れます。

また、スタッフ間の関係性向上のためには、「スタッフ同士の相性」も重要です。面接時には、ある程度候補者の人柄を把握することが可能ですが、求人採用に関しては院長の一存で決定せず、既存スタッフの意見を尊重する柔軟な考えも必要です。

そのためには、面接後に既存スタッフに対し、改めて感想を聞く機会を設けることが有益です。スタッフからの意見で新たな視点を得られることで、より良い意思決定につながるかもしれません。

対策2:必要なスタッフ像を明確にする

歯科衛生士を募集する際には、求める人物像(資格、年齢、経験や実績、価値観など)を明確に定義したうえで採用を行いましょう。

明確なスタッフ像を定義することで、医院に適した人材をより効率的に見つけられ、チームのパフォーマンスを向上させることが期待できます。

対策3:採用時対応で良い印象を与える

求人広告を出稿する際には、スタッフ全員がその内容を把握し、応募者からの電話や応募に対して迅速かつ丁寧に対応する体制を整える必要があります。スムーズで親切な対応は、応募者に対して医院のプロフェッショナリズムや働く環境の魅力を伝える機会ともなり得るためです。

また、応募者は通常、複数の面接を同時進行で進めることがあります。優秀な人材が他の医院に引き抜かれないように、面接前から誠実で好感の持てる歯科医院であることをアピールすることが重要です。そのようなアプローチは、応募者が医院から離れることを防ぐ一助となります。

対策4:福利厚生や雇用管理方法を整備する

歯科衛生士の離職率を低下させる対策には、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災などの福利厚生制度を整えることでスタッフの安心感を高めるという方法もあります。

安定した職場で働けることをアピールすることは、より良い人材の確保につながります。

対策5:教育体制を強化する

歯科衛生士を定着させるためには、教育担当者やカリキュラムを設け、新人歯科衛生士のスキルアップを支援しましょう。

継続的な教育プログラムの実施は、スタッフの技術向上や専門知識の獲得に繋がります。これは歯科医院のサービス品質向上だけでなく、スタッフのモチベーション向上にも寄与することでしょう。

対策6:歯科衛生士の主体性を尊重する

医院経営の方針として、歯科衛生士の主体性を尊重することは、スタッフがより活気を持って長く働くことに繋げられます。

特に既卒の歯科衛生士の中には、自身が積み重ねてきた経験や実績に誇りを持ち、自分なりのスタイルで仕事を行いたいと考える方もいます。

主体性をどこまで許容するかのラインはきちんと意識したうえで、スタッフそれぞれがやりがいをもって働けるような統制を図っていきましょう。

対策7:モチベーション維持に努める

モチベーションが低下しないような環境づくりとサポートを行いましょう。具体的には、定期的なフィードバックや評価を通じて、歯科衛生士の仕事への取り組みを認めて、成長の機会を提供するように努めます。

また、新しい技術や手法に関する教育プログラムやセミナーを継続的に院長が提供することで、歯科衛生士が専門知識を向上させる良い機会となり、モチベーションが高まりやすくなります。

対策8:業務を効率化して業務負荷を減らす

労働環境への不満が離職理由となりやすい歯科衛生士を定着させるには、できるだけ業務負荷を減らしてあげることが大切です。

業務が煩雑で時間を取られ過ぎたり、個々のスタッフに過度に依存する状況では、本来の歯科衛生士業務を円滑に行うことが難しくなり、歯科衛生士のストレスが増大します。

特にルーティン業務はできるだけ短時間で完了させ、スタッフの十分な心身の余裕を確保しましょう。歯科衛生士や他のスタッフがコア業務に集中できるようにするには、院内の業務を効率化し、患者満足度を高める取り組みが欠かせません。

そのため、業務の効率化や患者満足度向上に役立つツールの導入は、歯科衛生士の離職率低下にも寄与するでしょう。

歯科衛生士の離職防止には「人間関係の改善」と「業務負荷の軽減」によるモチベーション維持がポイント


歯科衛生士の離職率が高まる現状には、さまざまな要因が絡んでいます。特に人間関係の悪化や業務負荷の増加は、離職の大きな要因として挙げられます。

それらへの対策を行うことで、スタッフのモチベーションを維持し、離職を最小限に留めることができるのではないでしょうか。

また、スタッフにはモチベーションを与えつつ、本来の業務に集中できる環境を整えることが求められます。

これらの対策を総合的に実施することで、歯科衛生士の定着率を向上させ、業界全体の発展につなげることができるでしょう。

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歯科衛生士をはじめとする全スタッフの煩雑な事務作業を効率化させ、仕事の負担を減らして快適な職場環境を整えることは離職を防ぐ一助となることでしょう。

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