歯科医院必見【ドタキャン防止策】患者さんの心情に沿った具体的な対策方法とは
患者さんの突然のキャンセル、すなわち「ドタキャン」は、歯科医院を経営する上で大きな課題となり得ます。そのためドタキャンを単なる偶発的な出来事として捉えるのではなく、その原因を把握し対策を講じることが重要です。
本記事ではドタキャンによる歯科医院への影響や、患者さんがドタキャンをしてしまうときの心情、ドタキャンの対策等について解説します。
目次
歯医者がドタキャンされることによる影響
「時間になっても患者さんが来ない」「電話してもつながらない」といったドタキャンは、歯科医院の経営・運営にさまざまな悪影響を及ぼします。
収益の損失
例えば1日に8人の予約が入っていて、そのうち1人がキャンセルとなれば、その日に予想していた収益が1人分減少します。
かつドタキャンとなると、キャンセルが判明するのはその予約時間を迎えてからであるため、「急きょ他の患者さんの予約を入れる」といったことも物理的に難しいでしょう。単純に、その患者さんのために空けていた時間帯が無駄になるのです。
スケジュールの混乱
ドタキャンにより予約スケジュールが急遽変更になるため、その日の業務の流れやスタッフの割り当てにも混乱を引き起こします。これにより効率性が低下し、運営コストが増加する可能性があります。
士気の低下
ドタキャンが起きると、当然準備していたことや時間が無駄になってしまいます。そんなドタキャンが連続すると、歯科医師を含むスタッフの士気の低下につながります。
歯医者のドタキャン率と指標
一般的に、全ての予約のうち15%程度はキャンセルが生じるとされています。これには真っ当な理由のあるキャンセルも含まれますが、ドタキャン率が5%以上になった際には、積極的に対策を講じる必要があるとされています。
患者さんが歯医者をドタキャンする理由・心情
ドタキャンの原因を探るべく、まずは患者さん目線でドタキャンのよくある理由とそのときの心情を把握しておきましょう。
予約変更・キャンセルが手間
患者さんは「やむを得ず仕事が入ってしまったため予約を変更したい」「歯科医院へ迷惑をかけないようキャンセル連絡をしたい」と思っていても、予約変更・キャンセルの手段が電話のみの場合は、手間に感じてしまう可能性があります。
これにより予約変更・キャンセルの連絡を億劫に感じて後回しにしてしまい、結果的にドタキャンにつながってしまうというものです。
来院の重要性を理解していない
歯科治療において、患者さんが来院の重要性を理解しにくい、あるいは継続的に治療する必要性を感じにくいことも要因として考えられます。例えば、以下のような治療はそれに該当しやすいです。
- う蝕治療(根管治療)
- 歯周病治療
- 歯科保健指導
- 定期検診
う蝕治療(根管治療)
自覚症状のないCO段階であったり、C1以降でもたまにしか痛みを感じない、耐えられる痛みであったりといった場合は、患者さんは来院の必要性を感じられない可能性があります。
また一度は激痛で歯科治療の重要性を理解しても、根管治療のような来院が複数回に渡り、かつ毎回の変化がわかりにくいような場合は、継続的な来院の必要性を感じにくくドタキャンにつながることがあります。
歯周病治療
歯周病は「沈黙の病気」と呼ばれるほど、重度になるまで自覚症状が出にくい病気です。
そのため歯科医師や歯科衛生士に「歯肉に炎症がある」「次回以降は歯周病治療が必要」と言われても、その必要性を理解できないことがあります。
本人に自覚と危機感がなければ、処置後の変化も感じにくいでしょう。これにより歯科通院の優先度が下がり、ドタキャンにつながる可能性があります。
歯科保健指導
歯磨きは誰もが幼少期から行なっているものです。だからこそ、「あらためてその方法を学び直す」ということに価値を見出せない人は少なくありません。自己流の歯磨き方法に自信を持っている人ほど、歯科保健指導が必要なほどに磨き残しのあることも多いです。
歯科衛生士による歯科保健指導はすべての歯科治療の根本となるものです。しかし日常に根付いている内容であるからこそ、その重要性を理解してもらうのは容易ではないのです。
定期検診
口腔内に異常を感じていない限り、通院の重要性を感じられず予約を軽視しやすくなります。漫然と「3ヶ月おきの検診」「毎回同じ検査・チェックで異常なし」ということが続くと、患者さんの意欲が下がってしまってもおかしくありません。
担当者とのコミュニケーション不足
予約取得時に、患者さんにその日時や治療の必要性・緊急性が伝わっていないと、ドタキャンにつながるかもしれません。また患者さんとの関係構築が不十分である場合、患者さんは歯科医師・スタッフのアドバイスを軽視する可能性があります。
予約が入っていることを忘れていた
単純に予約日・予約時間を忘れていたゆえのドタキャンも考えられます。その要因として、2つの経緯が考えられます。
多忙により忘れていた
学校や仕事などにより忙しく、日々の生活や仕事の中でたくさんの予定・タスクを抱えている患者さんは多くいます。特に予約が数週間先、数ヶ月先などである場合、予約を入れたこと自体を忘れてしまうことがあります。
あるいは予約を入れていたことに直前で気付いたものの、すでに他の予定を入れてしまっているため来院が難しく、ドタキャンせざるを得ないということも考えられます。
予約方法に問題があった
予約方法が電話や受付での取得のみである場合は、普段からデジタルツールに慣れている若年層の患者さんが予約を忘れてしまうことがあります。
彼らはスマートフォンの通知やリマインダーなどのツールで日常生活を管理していることが多いため、紙のメモや口頭での通知は効果の薄いことがあります。
歯医者が嫌い・怖い
子どもや歯科恐怖症の患者さんなどは、これまで受けてきた歯科治療に対するトラウマや不信感から、強い嫌悪感と恐怖心を抱いていることがあります。
治療による痛みへのトラウマ
歯科治療中・治療後に強い痛みを経験したことで、歯科全体への恐怖心につながることがあります。またその痛みへのケアが十分に行われなかった場合、その記憶は患者さんの心に深く刻まれます。
麻酔による無感覚感へのトラウマ
人によっては麻酔中の特有の感覚が無力感につながり、トラウマへと変化することがあります。
歯科医師・スタッフへのトラウマ
歯科医師やスタッフから冷たい対応や無関心な態度を取られると、患者さんは居心地の悪さや不信感を抱くことがあります。これにより「歯科医院=嫌なところ」という印象がついてしまいます。
予約時は通院の意思があっても、予約日を迎え予約時間が近付いてくるほどに嫌悪感・恐怖心が強くなり、ドタキャンにつながるということもあります。
歯医者がドタキャンされないための対策
患者さんのドタキャン率を下げるための対策を、ドタキャンのよくある理由ごとに解説します。
「予約変更・キャンセルが手間」への対策
いまや子どもから高齢者まで、スマートフォンで調べものをすることが一般的になりました。そのためオンラインで気軽に予約変更・キャンセルができるようなシステムを導入することは高い効果が見込めます。
ただオンライン上でキャンセルされた場合は気付けない可能性も高いため、予約変更・キャンセルは「予約日の〇日前まで」「予約時間の〇時間前まで」等と明記しておく必要があります。
「来院の重要性を理解していない」への対策
過去にドタキャンしたことがある患者さんには、歯科医師が直接チェアサイドで次回の予約を取得すると効果的です。
その際に行なった治療内容と、次回の治療内容、なぜそれが必要なのかも併せて簡単に説明すると、患者さんは来院の重要性を感じられます。受付で事務的に予約を取得するよりも、患者さんにとってはずっと主体的なものになるでしょう。
「担当者とのコミュニケーション不足」への対策
予約確認のメールやSMSを活用するのも一つの方法です。特に、過去にドタキャンしたことがある患者さんには、予約日の2〜3日前に電話をするのも効果的です。
仮にこの電話時につながらなくとも、歯科医院側がそれを把握できた時点で、予約日までに「ドタキャン防止」のために何かしらの手を打つことができます。
「予約が入っていることを忘れていた」への対策
こちらも予約確認の電話やメール、SMS通知などで防ぐことができます。「予約が入っていることを忘れていた」というのは、過去のドタキャンの有無や患者さんの人柄に限らず、すべての患者さんにおいて起こり得ることです。
そのため、予約がある患者さんには自動でリマインダーが送られるようなシステムを導入するのも良いでしょう。
「歯医者が嫌い・怖い」への対策
歯科に対して嫌悪感・恐怖心を感じている患者さんには、行動変容法の適用が効果的です。行動変容法において「ドタキャンさせない」というのは長期的な目標になりますが、徐々にステップアップしていくことで歯科への恐怖心を段階的に和らげていきます。
行動変容法のうち不安を軽減させることを目的とした方法は以下の通りで、複数の方法を組み合わせて行うことも多いです。
- TSD(Tell Show Do)法
- 歯科治療の中でこれから行うことを言って説明(Tell)し、実際に使う器材を見せ(Show)、行う(Do)方法
- 例:「今日は奥歯のむし歯を退治しようね」(Tell)→「むし歯を退治するときはこれ(タービン)を使うよ。触ってみる?」(Show)→「ちょっとだけやってみるね」(Do)
- カウント法
- 10を数えながら各処置を進める方法
- 例:10を数えながら歯周病検査を行う→10秒耐えられたことを褒め、さらに10秒追加して段階的に治療を進めていく
- 系統的脱感作法
- 患者さんにとって刺激の弱いものから順にステップアップしていく方法
- 例:「今日は椅子(ユニット)に座ってみよう」→「今日は歯ブラシで歯を磨いてみよう」→「今日は椅子を倒して歯を磨いてみよう」→「今日はこれ(バキューム)で吸いながらやってみよう」→「今日はこれ(タービン)で歯を触ってみよう」
- モデリング法
- モデルとなる他者を観察させることで変化を生じさせる方法
- 例:兄弟がユニットに座って歯科治療を受けている姿を見させ、「自分にもできそう」「自分もやってみたい」という思いを引き出す
- リラクゼーション法
- 院内の工夫により治療中の患者さんの気持ちをリラックスさせる方法
- 例:水平位の患者さんからも見える位置にテレビを設置する、イヤホンで好きな音楽を聴きながら治療を受けてもらう
患者さんが子どもであればどの方法も実践しやすいですが、歯科恐怖症患者など患者さんが成人以上の場合は、TSD法を基本としたリラクゼーション法等が実践しやすいでしょう。
その他歯医者がドタキャン率を下げる方法
前述の対応方法に加え、以下のような対策を講じることでよりドタキャン率を下げることができます。
- キャンセルポリシーの明確化
- スタッフのドタキャンに関する意識確認
キャンセルポリシーの明確化
医院のキャンセルポリシーを明確にし、初診時あるいは予約取得時に伝えておくのも効果的でしょう。患者さんに予約の価値を理解させておくことができます。
キャンセルポリシーの具体的な例は以下の通りです。
- オンラインでの予約変更・キャンセルは、予約開始時間の48時間前まで可能
- 上記の時間を過ぎた予約変更・キャンセルは、電話でのみ受付
- 当日キャンセル・無断キャンセル(=予約時間後のキャンセル)の場合はキャンセル料を請求
- キャンセル料の振込が確認できた場合のみ、次回の予約取得が可能とする
- 当日キャンセル・無断キャンセルを2回以上行なった方は当院での診療不可
スタッフのドタキャンに対する意識確認
経営者である歯科医師からすると、収益のためにはドタキャンを何としても避けたいもの。
しかし、スタッフの中には「自分の患者さんが一人減ってラッキー!」「暇な時間ができた!」と感じる人もいるかもしれません。スタッフがドタキャンに対する危機意識を持っていなければ、患者さんとのコミュニケーションが疎かになったり、リマインドを怠ったりすることも考えられます。
患者さんのドタキャンは医院の収益に影響を及ぼし、長期的にはスタッフの減給等につながる可能性があることも、スタッフには伝えておきましょう。
まとめ
ドタキャンは多くの歯科医院が直面する問題ですが、適切な対策を講じることでその影響を最小限に抑えることができます。
- 「キャンセル率を減らしたい」
- 「でも、リマインダーのために受付スタッフの負担は増やしたくない」
- 「予約変更・キャンセル把握のために、場所を問わずアポ帳を確認したい」
- 「オンライン予約システムの導入は管理が大変そう
ドタキャンに伴って、こういったお悩みはありませんか?
Apotool&Box for Dentistでは、患者さんへ来院前に予約の確認メッセージを送信します。これにより「予約が入っていることを忘れていた」という理由のドタキャンを防ぐことができます。またアポ帳がデジタル化されるため、場所を問わずに予約状況を把握することができます。
そのほか、オンライン予約機能があることはもちろん、来院時に患者さんが院内のQRコードを読み取るだけで受付が完了します。
また、診察券もデジタル化が可能です。診察券アプリには決済システムも搭載されており、アプリ上でキャッシュレス決済が完了します。
いずれも業務の効率化とともに、ドタキャン率の改善にも効果を発揮するでしょう。ご興味のある方はお問い合わせください。
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