歯科業界の今後はどうなる?押さえておきたい最新技術と向き合うべきニーズを解説
歯科臨床における「一般的な知識や技術」は日々更新されていきますが、患者のニーズなども日々変化を遂げています。これには世論や市場の変化、技術革新などが関わっています。今回は主に技術革新による歯科業界への影響と、今後の予測について詳しく解説します。
目次
歯科業界の現状
まずはさまざまなデータから、歯科業界の現状を4つの視点で把握しましょう。
- 歯科医院数
- 歯科医師数
- DMFT指数
- 患者数
- 患者の年齢層
歯科医院数:おおむね横ばい
「コンビニの数より多い」といわれる歯科医院の数は、近年は顕著な増加が見られないものの、年間の増加数はおおむね横ばいです。
厚生労働省による令和5年5月の統計では、全国に歯科診療所は67,000以上あるとされ、そのうち10,000超は東京都にあるとされています。
歯科医師数:増加傾向
令和4年12月末時点での歯科医師数は105,000人を超え、昭和57年の調査から基本的に右肩上がりの増加を遂げています。なお2020年に行われた調査では、歯科診療所の管理者の年代は60歳代がもっとも多くて36.0%、次いで50歳代が30.3%となっています。
参照1:厚生労働省 令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
参照2:日本歯科医師会 データで見る2040年の社会と今後の歯科医療/日本歯科総合研究機構 地域包括ケアシステムにおける「かかりつけ歯科医師が果たす役割と今後の働き方等」(2020 年 3 月)に関する調査
DMFT指数:減少傾向
令和4年の歯科疾患実態調査によると、5〜14歳の1人あたりの平均DMF歯数(DMFT指数)は、ここ数年で顕著な減少傾向を示しています。15歳以上では若年層において減少傾向が見られ、35歳以上においても緩やかに減少傾向であることがわかっています。
患者数:減少傾向
厚生労働省の患者調査等によると、歯科診療所の患者数は2019年ごろから2024年にかけて減少傾向が見られています。
患者の年齢層:高齢化
日本は超高齢社会であり、これは歯科においても影響は例外ではありません。歯科にかかる患者の年齢層のうち、65歳以上の割合が増加し続けています。厚生労働省による令和2年10月の調査では、65歳以上の患者が半数近くを占めています。
患者のニーズ・市場の変化
歯科医師は増加し続け、歯科医院は増加あるいは横ばい、かつDMFT指数が減少しているという現状の中で、他院と差別化をせずう蝕治療のみを行う歯科医院は生き残っていくことが難しいでしょう。
歯科業界で今後も成長を続けるには、患者のニーズ変化を正確に把握する必要があります。
近年の患者は、一般的な治療プランを個々のニーズに合わせてカスタマイズした治療を求めることがあります。この背景には、インターネットやSNSで情報を容易に集めて比較・検討できるようになったこと、人によって審美的価値観やライフスタイル、経済状況には差があることなどが挙げられます。
なお「個々のニーズに合わせて治療をカスタマイズする」というのは決して煩雑なことではなく、例えば「矯正中の見た目が気になる」という患者に対しては、ブラケット矯正ではなくアライナー矯正を選択するといったことも含まれます。
加えて先述の通り、日本では高齢者に対する歯科治療の需要が増加しています。そして年齢に関係なく、一般的に健康に対する意識の高まりが見られ、予防的なアプローチや全身の健康と口腔の関連に対する理解が深まってきています。
歯科業界における技術革新・影響
歯科業界には技術の進展により、さまざまな新しいツールが登場しています。これらにより診療の効率向上や患者満足度の向上などが期待できることがあります。
具体的には、以下のようなサービスです。
- 3Dプリンティング
- AIを活用した診察
- 遠隔・オンライン診療
- 業務・患者情報等のクラウド管理
- 経営数値の自動分析
- 非接触での来院受付
3Dプリンティング
3Dプリンティング技術は、デジタルデータをもとに三次元の物体を層ごとに造形する技術です。歯科分野では、これを用いて矯正用アライナーや補綴物、インプラントのサージカルガイド等を作成することができます。
3Dプリンティング技術により所要時間とコストが大幅に削減され、またその精度も向上します。
例えば「完成まで1週間待ち+来院も2回必要」であったものが、「数時間で完成するため来院も1回で済む」ということが可能になります。これにより患者は通院にかかる費用と身体的・精神的負担が軽減し、満足度の向上にもつながります。
AIを活用した診察
AI(人工知能)はIT業界だけでなく、歯科業界にも参入してきています。例えばAIを活用して診断の精度を高めたり、業務の効率化を図ったりすることができます。
そのほか異常の早期発見や治療計画の立案を助け、歯科医院だけでなく患者にとってもメリットのもたらされることがあります。
世間では「AIにより無くなる仕事」という情報が多く出回っていますが、現在の歯科業界においてはむしろ大きな助けとなることが多いでしょう。
遠隔・オンライン診療
遠隔診療が行えるのは、医科の分野だけではありません。想像しやすいものといえばオンラインカウンセリングもその一つですが、近年では定期的に口腔内写真をオンラインで共有することで、定期検診の代わりとするサービス等も出てきています。
新型コロナウイルスの流行により、医療従事者でなくとも予防や感染症に関する知識を持つようになりました。これにより、流行が落ち着いた現在も「通院回数をなるべく減らしたい」と考える患者は少なくないでしょう。また、遠方に住んでいることで物理的距離のある患者にも対応することができます。
業務・患者情報等のクラウド管理
大規模病院では電子カルテ導入の動きが進んでいますが、一般開業歯科医院ではそう多くはありません。
紙カルテを使用している期間が長いと、それらを電子カルテへ移行するには多くの時間と労力を要します。また導入と運用には一定のコストがかかるため、電子カルテへの移行を渋るのは珍しいことではありません。
しかし業務や患者情報等すべてをデジタルで管理できるようになると、さまざまなメリットがもたらされます。例えば、Aprotool&Box for Dentistでは以下のようなことが行えます。
- 診療に必要な画像や動画を患者ごとに管理→カルテファイルから画像を探し出す手間が無くなる
- 患者リストの作成→患者を条件で絞り込んで表示させたり、定期検診が近い患者にまとめてメッセージを送ったりすることが可能
- 歯周組織検査の結果をiPadで入力→BOPやPCRは自動計算され、検査結果を院内で共有することが可能。紛失の恐れやカルテファイルから過去の結果を探し出す手間が無くなる
これらにより院内の効率化が進むだけでなく、情報の正確性と安全性も向上します。またデータにはいつでもどこからでもアクセスができるため、セキュリティ面さえ問題無ければ柔軟な働き方も可能になるでしょう。院内に余裕が生まれることで、患者にも良いイメージを与えることができます。
経営数値の自動分析
ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用すると、患者数や収益、治療効率など経営に関するデータを収集・分析できます。これによりリアルタイムでの経営判断が可能となり、より効率の良い医院経営・運営が実現します。
また市場の変化や業務の問題点を早期に発見し、迅速に対応できるようにもなります。
非接触での来院受付
来院受付のためのツールには、例えば患者のスマートフォンを使用して、患者が自らチェックインすることができます。
Apotool&Box for Dentistの受付アプリ「私の歯医者さん」では、患者が専用アプリを起動し、受付に置いてあるQRコードを読み取るだけで来院受付が完了します。これにより「予約時間前に来たのに受付で待たされた」「受付前が混雑する」といったことを減らすことができます。
また受付スタッフの負担も軽減され、感染症のリスクも減らすことができるでしょう。
歯科業界の今後の予測と対策
今後も歯科業界で成功を収め続けていくには、歯科業界の現状を把握した上で、今後5〜10年でどのような変化が起こるか予想し対策を講じる必要があります。
歯科DX化の促進
先述の通り、歯科業界ではデジタル技術の参入が進んでいます。今後5〜10年でこれらの技術はさらに進化すると考えられます。
一方で、歯科医師やスタッフが新しい技術への適応を迫られる点や、投資の必要性も否めません。そういった点を考慮した上で、自院に合ったサービスを選択・導入しましょう。
ニーズ増加が予想される診療科
歯科業界では今後、以下の3つの診療科のニーズが高まっていくことが予想されます。
- 予防歯科
- 審美歯科
- 訪問歯科
それぞれの特徴を把握した上で、これらの実施を視野に入れる必要があります。
予防歯科
予防歯科には、「治療のために歯科医院へ行く」ではなく、「う蝕や歯周病を予防するために、問題がなくても定期的に歯科医院で診てもらう」という考え方の患者が来院します。
具体的にはクリーニング、歯科保健指導、フッ化物塗布、シーラント等が含まれます。
審美歯科
近年、患者の審美的ニーズや美容に対する意識は高まっています。これに伴い、ホワイトニングや歯科矯正などの自費診療への需要が増加しています。特に若年層を中心に、今後もこの傾向は続くと予想されます。
審美歯科ではホワイトニング、歯科矯正などが代表的ですが、補綴治療におけるセラミックの使用も含まれます。「芸能人のように歯を綺麗にしたい」「時間をかけずに歯を白く綺麗に並べたい」といったさまざまなニーズに応えられるようになってきていますが、同時にそれによるデメリットも理解してもらった上で治療を進めるべきでしょう。
訪問歯科
高齢者は有病率が高く、自身で通院できない高齢者も多くいます。また日本人の死因として上位に位置する誤嚥性肺炎は、口腔衛生不良に起因することがあることもわかっています。
そのため、例えば歩行困難により通院できない患者や寝たきりの患者などに対して、訪問歯科の需要は今後ますます増えていくでしょう。
高齢者の歯科診療ニーズ増加
高齢者に対する歯科診療としては、先述の訪問歯科診療の他、定期検診、義歯やインプラント治療、歯牙の色調変化や歯肉退縮に対する審美的な治療等も含まれます。
その他院内をバリアフリーにする、敷地内に駐車場を設置するなど、高齢者が来院しやすい設備投資を行うことも重要です。
働き口・人材不足
「働きたいのに働く場所が無い」、または逆に「働いてほしいのに来てもらえない」といった相反する二つが起こる可能性があります。
歯科医師
先述の通り、歯科医師数自体は増加傾向にありますが、歯科診療所の管理者の世代は60歳代がもっとも多いことがわかっています。また管理者のうち、将来の継承の予定については「予定なし」あるいは「不明」と答えた人の割合は88.5%にも昇っています。
この傾向がこのまま続くと、歯科医師は増加し続けるにも関わらず廃業する歯科医院が増え、歯科医師の働き口が無いということも考えられます。
そのため、歯科医院の継承という点でも、自身の歯科医師としての価値という点でも、周りから魅力的に思われるような実績・差別化要素の構築が重要になります。
歯科衛生士
特に近年では、歯科衛生士不足が多くの場所で叫ばれています。特に地方では人材の確保が難しいことも多いでしょう。根本的な解決方法としては、教育機関でのより多くの人材育成が挙げられますが、いま歯科医院でできることとしては以下のようなことが挙げられます。
- スタッフの働き方の見直し
- 「この歯科医院で働きたい」と思えるような環境を整えること
- 他院との差別化
また歯科衛生士は99%が女性であることから、女性が働きやすい職場を目指すことも重要です。あるいはAIやデジタル技術の導入により、「そもそも人手を必要とする業務を減らす」という長期的な考え方もあります。
歯科衛生士は求人倍率が20倍とも言われるほど売り手市場となっています。これは歯科衛生士にとっては、「いつでも転職できる」「今の職場が嫌になったら他の歯科医院へ行けば良い」という見方にもつながっています。
そのため長く働いてもらうためには、彼女らのことを考えて何かしらの工夫を施す必要があるでしょう。
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まとめ
歯科業界は、患者ニーズ・市場の変化、急速な技術革新によって今後も大きく変わり続けることが予想されます。これらは院内の業務効率化や治療の質向上に影響を与えますが、いずれにせよ歯科業界の今後を見据えるなら、避けて通ることはできません。
しかし「どこから着手すれば良いのか」「院内DX化といっても、どこから変化させていけば良いのか」と悩む方もいるかもしれませんね。
Apotool&Box for Dentistは、「歯医者さんのこと、ぜんぶ。」というキャッチフレーズ通り、予約から診療、会計まで一元管理が可能なシステムです。
予約という点では、患者はアプリやWeb予約を利用して、自身で予約・来院受付をすることができます。これにより予約管理や集計作業、窓口業務が飛躍的に効率化されるため、スタッフの負担が軽減されます。
診療という点では、患者のレントゲン画像や歯周組織検査の結果などをデータとして管理することができます。これにより業務の効率化が図れるのはもちろんのこと、治療の質も向上するでしょう。
また会計という点では、患者がキャッシュレス決済を行えるようになります。これにより患者は、診療後に受付で待つことなくスムーズに帰宅することができます。院内の混雑が緩和されるだけでなく、患者満足度も向上するでしょう。
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