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歯科衛生士ができることとは?歯科医院での具体的な業務や歯科助手との違いを解説

コラム

歯科衛生士は、患者の口腔衛生状態の向上はもちろん、医院と患者間の関係性の構築にも不可欠な存在です。そのため彼・彼女らは日々幅広い業務を担当していますが、歯科衛生士ができることや行為は法律で定められており、越権行為は法で罰せられます。

本記事では歯科衛生士ができることと、任せてしまいがちですが実は歯科衛生士がしてはいけない行為、歯科助手との違い等を解説します。

歯科衛生士ができること

歯科衛生士ができることや業務行為は、大きく4つに分けられます。

  • 歯科予防処置
  • 歯科診療補助
  • 歯科保健指導
  • 口腔機能訓練

歯科予防処置

  • スケーリング
  • フッ化物塗布
  • シーラント処置 など

歯科衛生士は、患者の口腔衛生の維持と疾患予防において中心的な立場にあります。具体的な業務のうち、特にスケーリングやフッ化物塗布を通じた虫歯予防は多くの割合を占めています

スケーリングでは超音波や手用スケーラーを使用して、歯垢や歯石を歯周ポケット内まで丁寧に除去します。フッ化物塗布は歯の再石灰化を促すことで、虫歯の進行抑制を行います。これらの処置は、患者の口腔内状態や治療状況と連動して行われるべきであり、個々のリスク評価に基づいた介入が効果的です。

矯正治療患者においては、特にブラケット装着患者の管理が重要です。ブラケット周囲にはワイヤーやエラスティック等細かな装置が付いていることも多く、患者のセルフケアだけでは難しいことがしばしばあります。

そのため、歯科衛生士による超音波スケーラーや専用のブラシを使用した、矯正装置周辺のプラークコントロールが欠かせません。これにより矯正治療中の虫歯発生リスクを軽減し、矯正治療の成果を最大化させることができます。

また主に小児に対して、萌出して間もない第一大臼歯に行うシーラント処置も、歯科衛生士ができることのうちの一つです。シーラント材の適切な塗布で長期的な虫歯予防効果が期待できるため、歯科医師がその処置を監督する必要があります。

歯科診療補助

  • 器材の準備・受け渡し
  • 処置中の唾液・水分のバキューム吸引
  • 機械の準備・セット など

歯科衛生士が歯科医師の診療をサポートすることは、診療がスムーズに進み患者の負担を軽減することに繋がります。治療の流れを理解し、先回りして動く歯科衛生士の診療補助は、歯科医師が複雑な治療を行う上で欠かせません。

状況に応じて臨機応変に対応し、かつ歯科医師とも適切なコミュニケーションを行える能力のある歯科衛生士は、どの場面でも重宝されます。

特に歯科に対して不安・恐怖心を抱える患者や小児に対しては、歯科衛生士の役割はさらに重要です。歯科衛生士にはこれらの患者が安心感を感じられるよう、「患者の不安を和らげるための環境を作る」「適切な言葉遣いを用いて説明や対話を行う」「患者が診療室に入る前から信頼関係を築く」等といった、より優れた対人スキルが求められます。

このように、歯科衛生士が歯科医師と協力して患者一人ひとりに合わせたアプローチを行うことで、診療の質が向上し、患者の満足度向上にも貢献します。

歯科保健指導

  • 歯磨き指導
  • 食生活・栄養指導
  • 禁煙指導 など

歯科保健指導では、歯科衛生士は患者の口腔衛生環境を維持・向上させるための指導を行います。これには歯ブラシやフロスの正しい使用方法の指導が含まれ、例えば歯ブラシを歯面に当てる際の角度や圧力、フロスの効果的な操作方法など、患者の口腔内に合わせて細かな指導を行い、それが患者の習慣となることを目指します。

さらに食生活は口腔内の環境に直接影響を与えるため、普段の食事・間食内容の見直しや改善の提案も行うことがあります。糖質の高い食品や酸の強い飲料の摂取、頻回の間食やだらだら食べは虫歯のリスクを高めます。患者がこれらを自覚し管理できるよう指導します。

加えて喫煙は歯周病の進行に大きく関与するため、歯科衛生士が積極的に禁煙指導を行うこともあります。ニコチンによる血管収縮は歯肉の血流を低下させるため、歯周病の初期兆候が見えづらくなったり、歯周ポケット内の酸素濃度が低下することで歯周病菌が増殖しやすくなったりします。

このように歯科保健指導では、日々の口腔ケアの質の向上、生活習慣の改善、そして禁煙指導といった多角的なアプローチが求められます。

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口腔機能訓練

  • 嚥下体操
  • 唾液腺マッサージ
  • 口腔周囲筋ストレッチ
  • ガムラビング
  • パタカラ など

口腔機能訓練は、高齢であったり口腔疾患や障害を抱えていたりする患者に対して行います。具体的には口腔周囲筋強化のためのトレーニングや、嚥下をスムーズに行うための練習、適切な咀嚼技術の指導等です

これらの目的は、患者の咀嚼、嚥下、発声機能の改善を図ることで、食事の摂取能力の向上、発音の明瞭性の向上、唾液量の増加等を目指すことにあります。

例えば口腔周囲筋の強化では、顔面の筋肉、口唇、頬、舌の筋肉のエクササイズを行います。これらの筋肉を強化することで、咀嚼だけでなく口腔内における食物の位置付けも適切に行えるようになり、嚥下障害のリスクを軽減します。

またこれによりさまざまな表情をスムーズに作り出せるようになり、社会生活における自信にもつながります。

歯科衛生士がしてはいけない業務・行為

歯科衛生士ができることと対比して、歯科衛生士がしてはいけない業務・行為もご紹介します。

まず、歯科衛生士がしてはいけない業務・行為を述べる上で避けられないのが「絶対的歯科医行為」「相対的歯科医行為」という分類です。

これらは明確な線引きがされていないという現実もあり、判断が難しいこともありますが、歯科衛生士を雇用する上では知っておくべき分類です。

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絶対的歯科医行為

絶対的歯科医行為とは、「歯科医師しか行えない行為」を指します。つまりどのような状況であれ、歯科衛生士がしてはいけない業務・行為です。

「歯科医師の手が空いていなかった」「人手が足りなかった」等、どのような理由であれ、歯科衛生士が行うと罰せられます。実際に通報され歯科医師と歯科衛生士が逮捕された事例もあります。

抜歯・歯の切削・切開

絶対的歯科医行為のわかりやすいものとして、抜歯などの観血処置があります。これらは絶対的歯科医行為であり、歯科衛生士が行うことはできない業務・行為です。

補綴物のセット

インレーやクラウン等補綴物のセットは、正確な位置決定や調整が必要であり、機能面だけでなく患者の審美的要求も満たす必要があります。これを歯科衛生士が行うことはできません。

補綴物のセットに関して歯科衛生士ができるのは、セット物の用意やTeCの作製等です。

精密印象・咬合採得

歯科衛生士は対合印象を採ることはできますが、精密印象や咬合採得は絶対的歯科医行為であるため行えません。「歯科医師に咬合採得をしておくように言われた」「歯科医師の手が空いていないため、対合印象の次に精密印象を採っておいた」等という行為は違法です。

レントゲン撮影

レントゲン撮影を行う際、機械の位置調整やフィルムを患者の口腔内にセットしたり等、歯科衛生士ができることは多くあります。しかしレントゲン撮影の実施(照射)は、絶対的歯科医行為であり歯科衛生士は行えません。

撮影自体はボタンを押すだけであるため、自分の手が空いていないと「セットをしている歯科衛生士にそのまま任せたい…」となるかもしれませんが、違法であるため注意しましょう。

相対的歯科医行為

相対的歯科医行為は、「歯科医師の監視下にあれば、歯科衛生士が行っても良い行為」です。歯科衛生士に任せる場合は丸投げではなく、異常が起きた際にすぐに対応できるよう監視下で行う必要があります。

表面麻酔の塗布

麻酔の針が刺さる際の痛みを軽減するための表面麻酔は、歯科医師の監視下であれば歯科衛生士が行うこともできます。製品によっては数十秒という短時間で麻酔作用が発現するため、歯科医師と密に連携しながら行う必要があります。

ホワイトニング

歯科衛生士業務として見られることもあるホワイトニングも、相対的歯科医行為のうちの一つです。歯科衛生士が単独でできる行為ではなく、必ず歯科医師による指示や監督が必要です。

歯科衛生士と歯科助手の違い

歯科医院において歯科衛生士は、できることが比較的多く、歯科医師の右腕となることも多いでしょう。

しかし歯科衛生士の採用・維持には人件費を要するのはもちろん、受付業務や滅菌作業等本来の歯科衛生士業務でないことばかり任せていると、当人たちから不満が出るのもよくあることです。

そこで、歯科助手の採用を検討する歯科医師も少なくありません。歯科衛生士と歯科助手は、患者から見ると似ていて違いがわからないとされることも多いですが、明確な違いがあります

資格の必要性の違い

  • 歯科衛生士:国家資格が必要
  • 歯科助手:不要

歯科衛生士は、厚生労働省が定める歯科衛生士学校等を卒業し、国家試験に合格して初めて歯科衛生士として働くことができます。国家資格は歯科衛生士法によって定められ、学校によってカリキュラムに差はあるものの、卒業単位数が定められています。

それに対して歯科助手には、民間の資格はいくつかありますが、歯科助手として働く上で必ず求められるものではありません。つまり、誰でもいつでも「歯科助手」を名乗り、働くことができます。

業務の違い

  • 歯科衛生士:歯科医療業務
  • 歯科助手:歯科医療行為はできない

歯科衛生士ができることは先述の通りですが、歯科助手が行えるのは受付業務や事務、滅菌、院内の清掃等、患者の口腔内に触れない行為に制限されています。

チェアサイドでの器材の準備やセメントの練和等は可能ですが、歯科衛生士の代わりに口腔内のクリーニングを行なったり、セメント除去やフッ化物塗布、歯磨き指導等は行えません。

給与の違い

  • 歯科衛生士:平均月収およそ26万円
  • 歯科助手:平均月収およそ16万円

できることやそれに伴う責任、資格の必要性等から、歯科衛生士は歯科助手に比べて月収の平均が10万円ほど高くなっています。そのため医院を経営する上では、歯科衛生士ができることを考慮しながら、配置する人数構成や業務配分を上手く行うことが重要です。

まとめ

歯科衛生士が行える業務は多岐にわたり、日々の臨床で多くの役割を担っています。彼・彼女らの業務をさらにサポートし、院内の効率を高めるためには、最新のデジタルツールの導入が欠かせません。

例えばApotool&Box for Dentistの予約管理システムは、患者の予約管理やフォローが簡単に行えるため、歯科医師だけでなく歯科衛生士の予約の把握が容易に行えます。

また歯科助手による受付業務の負担も軽減され、歯科衛生士からより診療のサポートを受けられるようになるでしょう。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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