歯科医院の居抜き開業のメリット・デメリット!物件を選ぶ際にチェックすべきポイント
歯科医院の開業は大きな決断であり、成功させるためには多くの要素が関わってきます。中でも開業の形態は、その後の費用や集患、運営に大きく影響します。
歯科医院の居抜き開業は、多くの歯科医師にとって魅力的な選択肢の一つですが、他の選択肢と同様メリットとデメリットがあります。本記事では、居抜き開業のメリットと潜在的なリスク、物件選びで注意すべきポイント等を詳しく解説します。
歯科の居抜き開業とその他の開業方法の違い
歯科医院を開業する際には、本記事で述べる居抜き開業と、その他いくつかの開業方法があります。居抜き開業とそれぞれの違いをご紹介します。
居抜き開業
居抜き開業とは、前に歯科医院が運営されていた物件を引き継ぎ、必要に応じて内装の変更等を行なって歯科医院を開業する方法です。
この方法は、元の医院が使っていた設備やインフラをそのまま使用することができるため、歯科医院としての基盤や機能が初めからおおむね完成している状態です。
具体的にはユニットや待合室の位置など、院内のレイアウトがほとんど整っており、水道や電気、ガスの配管も元の歯科医院の需要に合わせて設計されていることが多いです。そのため自身のニーズに合っていれば、比較的短期間で開業を迎えることができます。
テナント開業
テナント開業とは、商業ビルやショッピングモール、その他多目的ビル等の一室を借りて歯科医院を開業する方法です。
この方法では院内のレイアウトを一からデザインし、必要に応じて内装の変更や設備の導入を行います。
テナント開業では、居抜き開業に比べて立地の選択肢が幅広く、患者層のターゲティングがしやすいです。例えば子どもから大人まで幅広く呼び込みたいのであれば、交通の便が良いあるいは駐車場の広いショッピングモール内等に位置するテナントを選ぶと良いでしょう。
なお駅前等利便性の高いテナントでの歯科医院の開業は、高い集患力を見込むことができますが、他のテナント開業者の競争意識が高かったり、テナントの規約が厳格に定められていたりすることがあります。
新規開業
新規開業は、開業する者が土地や建物の購入から行い、自由なレイアウト・設計で歯科医院を開業する方法です。
新規開業では、医院の設計と構造から内装まで完全にオリジナルのものを作り上げることができるため、理想とする歯科医院を実現することができます。
しかし新たに建物を建設するということでもあるため、計画から完成までに時間と費用がかかります。
歯科の居抜き開業のメリット・デメリット
歯科医院の居抜き開業は多くのメリットがありますが、捉え方を誤るとデメリットになる部分もいくつかあります。居抜き開業の具体的なメリットとデメリットは次の通りです。
メリット1:開業にかかる費用/資産減少を抑えられる
歯科の居抜き開業最大のメリットは、開業時にかかる設備投資費用を大幅に削減できることです。
前の歯科医院が使用していたユニット等診療に関わる大型機材、オートクレーブ等の清潔・滅菌に関わる設備、その他レントゲン機器等の高価な機器をそのまま利用できるため、新規購入に比べて経済的な負担が大幅に減少すると考えられます。
また内装・レイアウトや配管等インフラを含む基本的な構造が整っているため、総合的に見て資産の減少も抑えられるでしょう。
メリット2:短い期間で開業できる
前の歯科医院で使用されていた設備とインフラを活用できるため、費用だけでなく手間も抑えられ、開業までの準備期間が短くて済みます。
仮に設備の追加や内装のリノベーションを行うとしても、新規開業に比べると最小限で済みます。これは計画段階から見ると、早期に収益化を図ることができるというメリットにもなるでしょう。
メリット3:新規患者を集めやすい
居抜き開業では、元々その場所で前の歯科医院が運営されていたため、自身が開業する際にはすでに地域住民から認知されていることが多いです。そのため新規患者の獲得が比較的スムーズで、開業初期から安定した患者の流入が期待できます。
その地域に根ざしたマーケティングや口コミも効果的に働きやすく、新規開業等に比べて集客の効率が良いと言えるでしょう。
メリット4:過去データにより経営予測がしやすい
前の歯科医院を経営していた歯科医師あるいは経営者から、当時の経営に関するデータを引き継ぐことができれば、自身の医院の将来的な経営計画を立てやすくなります。
過去の患者履歴や財務データがあると、無い場合に比べてニーズの予測や広告・プロモーションの計画、収益予測がより正確に行えます。自身にとっては未知の環境での開業であっても、リスクを抑えながら効率の良い経営が可能となります。
デメリット1:自分好みの内装にしづらい
居抜き開業の場合、前の歯科医院の内装やレイアウトを基本的にはそのまま引き継ぐため、自身の好みや医院のイメージに合わせたカスタマイズができないことがあります。
大規模な改装やリノベーションを行いたい場合は、費用と時間がかかるため初めから新規開業を選択した方が良いかもしれません。
デメリット2:開業当初から機材のメンテナンス費用がかかる
居抜き開業では、前の歯科医院の設備や機材を利用するため、通常よりも早期にメンテナンスや交換が必要になることがあります。また居抜き開業の時点で使用年数が長く故障のリスクも高まっていたり、型が古く結局買い替えが必要になったりということも珍しくありません。
これは居抜き開業のメリットである「初期費用を抑えられる」という点と表裏一体を為すものです。居抜き開業により、逆に経済的な負担を感じることがあるのです。
デメリット3:場合によっては新規患者を集めにくい
前の歯科医院が有していた評判やイメージが悪かった場合、そのネガティブな印象が自身の居抜き開業後にも影響を与えることがあります。イメージダウンは一瞬ですが、信頼回復には時間を要するものです。
また逆に、前の歯科医院の評判やイメージがとても良く存在感が強く残っている場合、新規患者や地域住民に比較されてしまい、初期の集患が思うように進まないということも考えられます。
加えて前の歯科医院から居抜き開業までの期間が長ければ長いほど、その地域の患者も離れてしまっている可能性が高いです。居抜き開業だからといって、多くの患者を引き継げるとは限りません。
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歯科の居抜き開業における物件の正しい選び方
歯科医院の居抜き物件を選ぶ際に、注意して確認すべき要素をいくつかご紹介します。これにより開業によるリスクを最小限に抑えつつ、準備を進めていくことができるでしょう。
立地条件を確認する
居抜き開業を検討し物件を選ぶ際に、もっとも重要なのが立地条件の確認です。立地は歯科医院の集患力を大きく左右します。具体的には以下のような項目です。
アクセス
物件が公共交通機関(駅やバス停)から近く、患者が容易に来院できるかどうかが重要なポイントです。駅から徒歩で来られる位置、あるいはバスの利用が必要であっても、バス停が目の前にある等が理想的です。
人通りの多さ
物件が商業地域や住宅地のどちらに位置しているか、周辺に学校やオフィスビルがあるかなど、日常的に人が多く通る場所に位置しているかも重要です。
競合の有無
近隣に他の歯科医院がどれだけあるかを調べておきましょう。可能であれば競合が少ないエリアの物件を選択します。
元の歯科医院の閉院理由・評判を把握する
例えば地域住民のニーズに合っていなかった、住宅街なのに駐車場の台数が少なくて通いづらかった、思ったより集患が上手くいかなかった等、前の歯科医院がなぜ閉院したのかがわかれば、二の舞になるのをあらかじめ避けることができます。
また前の医院の評判や口コミも調べておくと良いでしょう。評判や口コミは、以下のような方法で知ることができます。
地域住民へのヒアリング
直接地域の人々に前の歯科医院について尋ねることができれば、リアルな声を集め開業や経営の参考にすることができます。
口コミ調査
Googleの口コミやソーシャルメディアなど、インターネット上でも評価を確認し参考にすることができるでしょう。中でもGoogleの口コミはGoogleアカウントとの連携が必須であり、基本的に実名での登録が必要である点から、信憑性の高いものであると考えられます。
内装を直接見て確認する
居抜き開業の物件を決定する際には、写真等ではなく必ず内装や状態を直接自身の目で確認しに行きましょう。想定外の費用発生を避けるために不可欠です。具体的には、以下のような項目を確認しましょう。
設備の状態
ユニット・チェア、レントゲン機器、オートクレーブ、照明設備等が現在も問題なく使えそうか、メンテナンスは適切に行われていたかを確認します。
装飾とレイアウト
内装のデザインやレイアウトが自身の好みに合っているかだけでなく、時代に合ったものであるかの確認も重要です。改装が必要そうであれば、その規模感も把握しておくと見積もりの依頼も出しやすいです。
建物の構造
配管や電気、換気システムなど、患者からは見えない隠れたインフラの状態も確認しておく必要があります。
歯科の居抜き開業の流れ
歯科医院の居抜き開業を成功させるには、計画的かつ段階的に進めていくことが重要です。物件探しから資金調達、必要に応じた内装の変更、そしてスタッフの採用に至るまで、各ステップで注意すべきポイントをご紹介します。
物件探し
歯科の居抜き開業の最初のステップは、適切な物件を見つけることです。物件探しでは、先述の通り以下の項目を考慮する必要があります。
- 立地:アクセスが容易で、見つけやすい場所にある物件を選ぶ。周囲の商業環境や住宅密度も経営に影響を与えます。
- 物件の状態:前の歯科医院で使われていた医療設備や内装の状態を確認し、リフォームが必要かどうかを確認します。
- コスト:販売価格や賃貸料が自身の予算内であるか、また長期的な経営コストとのバランスを確認します。
- 契約条件:リース契約や購入契約の条項を理解し、将来的な拡張や変更を検討している場合はそれに対応できる物件かどうかも確認します。
資金調達
開業には初期投資が必要であり、そのための資金計画を立てる必要があります。自身では賄いきれない金額である場合、資金調達の方法として次のようなものがあります。
銀行ローン
歯科医院の開業向けのローンプランを提供している金融機関を利用すると良いでしょう。事業計画書等の手配が必要です。
投資家からの資金調達
個人投資家やベンチャーキャピタルから資金を調達することも一つの方法ですが、一般的な方法ではありません。
内装の変更・カスタマイズ
居抜き物件でも、自身の好みや歯科医院のイメージ、機能的な面から内装の変更が必要な場合があります。
自身の歯科医院やブランドイメージに合わせた色・ロゴの導入、デザインの変更を行なったり、設備のアップグレードやレイアウトの変更を行うことで作業効率を向上させたりすることができます。
スタッフ採用・物品購入
院内の準備が整ったら、開業に向けてスタッフの採用と必要物品の購入を行いましょう。ここまでくれば開業は間近と言えます。
スタッフの採用では歯科衛生士や歯科助手、歯科技工士、受付スタッフなど、採用にかかる費用と経営コストを調整しながら必要な人材を採用します。求人広告の出稿や人材紹介会社の利用が効果的です。
また、前の歯科医院で働いていたスタッフを再雇用できることもあります。スタッフは自宅から近隣のところで働くことも多く、前の院長についていく人もいれば退職する人もいます。
もし前の歯科医院で働いていたスタッフを再雇用することができれば、前の歯科医院に通っていた患者が来院した際に関係を継続することができ、集患にもつながるでしょう。
物品の購入に関しても、不明点があれば歯科開業コンサルタントに相談するのも一つの方法です。
まとめ
歯科医院の居抜き開業は、開業にかかる費用の削減、短期間での開業準備、そして開業後の患者獲得のしやすさといった複数のメリットがありますが、それらを享受するには物件の慎重な検討が必要です。
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