歯科M&Aとは?実施のメリット・デメリットをその他出口戦略と併せて解説!最新動向も要チェック

歯科業界におけるM&Aは、歯科医院の成長、競争力の強化等を目指す戦略のうちの1つです。本記事では歯科M&Aの目的やメリット・デメリットを解説し、事業承継や廃院との根本的な違いを解説します。さらに歯科M&Aの最新動向もご紹介します。
目次
歯科におけるM&Aとは
まずM&Aとは、Mergers(合併)とAcquisitions(買収)の頭文字を取ったもので、歯科のM&Aには事業の譲渡や他院の買収・売却等が含まれます。また複数の医院が合併して1つの大きな組織になることも歯科M&Aの例です。
歯科におけるM&Aの目的
歯科M&Aの目的としては、主に3つ挙げられます。
- 事業・市場の拡大
- 専門知識・技術の獲得
- 事業承継
事業・市場の拡大
買収により医院全体の規模を拡大することで、物品購入時のコストを削減したり、管理費用を分散させたり、効率の良い運営が可能になります。また地理的にも市場を拡大できるため、集患の幅が広がり収益の増加が見込めます。
専門知識・技術の獲得
買収先の他院が持っていた専門技術も取り入れることができます。これにより提供できる治療の幅が広がり、さらなる集患や収益増加が見込めるでしょう。
事業承継
日本歯科医師会の調査によると、2020年時点では62歳の男性歯科医師がもっとも多いとされています。それに加えて、「将来の継承の予定があるか」という問いに対して「不明」「予定なし」と答えたのがおよそ9割とされています。
回答者の年齢として30代以下の管理者は全体のわずか5.7%、40代の管理者も全体の17.2%です。一方で、50代30.3%、60代36.0%、70歳代以上は9.9%と50代以上の合計は76.2%です。
そのため先述の「継承の予定がない」と答えた9割のうち、多くを占めるのは50代以上の管理者であることが予測されます。
これにより、歯科医院の運営を中心とする歯科業界においては後継者不足が問題になっているといえます。歯科M&Aでは、こういった問題も解決することができます。
身内や知り合いに自院を引き継いでくれる人がいなくても、歯科M&Aを行えば廃業を免れ、事業承継が可能になるのです。
歯科医院の3つの出口戦略(EXIT戦略)
出口戦略(EXIT戦略)とは、経営者が自身の事業から撤退するための計画を指します。出口戦略(EXIT戦略)には本記事のテーマである歯科M&Aだけでなく、M&Aの形を取らない事業承継、廃院等さまざまな形態があります。
なおコンサルタント等に一般的に勧められるのは、以下の順であることが多いです。
- 親族内承継
- 1.が不可能なら第三者承継
- 2.が不可能ならM&A
- 3.が不可能なら廃院
なぜなら1.に近づけば近づくほど、経営者(院長)が行なってきた事業を理解した上で引き継いでもらいやすいためです。これはリスクが少ないことをも意味します。そして歯科業界においてM&Aを行うには、買収したいと思われる歯科医院である必要があります。
このようにそれぞれの選択肢にメリットとデメリットがあるため、比較してみましょう。
M&A
先述の通り、他の歯科医院や医療機関との合併または買収・売却を通じて、事業を拡大あるいは逆に終了させる方法です。
歯科M&Aにより事業を多角化することができ、これにより1つの歯科医院に依存せずリスクを分散させることができます。
例えば市場の変動や経済状況の悪化が生じたとき、1つの歯科医院がそれをダイレクトに受けるのではなく、リスクを分散することで一医院が受ける影響を緩和させることができるのです。
メリット
- コスト効率が向上する
- 集患しやすくなり収益増加の機会が生まれる
- 多くの専門知識・技術を活用できる など
デメリット
- 医院間の文化の違いや経営方針の不一致により摩擦を生じることがある
- 統合に伴う初期コストが高いことがある
- 買収後の統合作業が複雑で、多くの時間・労力を要することがある など
事業承継
事業承継は、自院を身内や信頼できる歯科医師、外部の後継者に引き継ぐ戦略です。よくある事例としては、父親が開業した歯科医院を息子が引き継いだり、勤めてくれていた信頼できる歯科医師に引き継いだりするケースです。
息子等身内での事業承継を検討できる状況であれば、その選択が経済的にも将来的にももっとも成功しやすくスムーズであるといえるでしょう。経営者としての負担も少なく済み、スタッフも安心して働き続けることができます。
また患者との関わりや地域とのコミュニケーションも、おおむね保持されたまま移管することができます。事業承継前には、後継者の育成や教育、および事業承継後のお互いのルール等も作っておくことが重要です。
メリット
- 患者や地域からの信頼を維持したまま事業を続けられる
- 経営理念や医院文化をおおむねそのまま受け継ぐことができる
- スムーズに移行できることが多い など
デメリット
- 後継者の能力や経営に関する知識が不足している場合はリスクとなる
- 元々の関係性が近いため、感情的な問題や家族間の対立が生じる可能性がある など
廃院
廃院は、歯科医院の運営を完全に終了させ、すべての業務活動を停止することを意味します。これは後継者が見つからなかった、経済的な理由、経営者の健康面での問題、市場の変化等によることが多いです。
診療がある中での事業承継やM&Aはするべきことが多く、「面倒だからもう廃院で良い」と考える歯科医師も多いかもしれません。
しかし「廃院を選べば手間が少なくコストもかからない」というのは間違いです。廃院するには多くの手続きが必要である上、スタッフ全員の解雇も必要です。職を失うことになるスタッフ達への配慮や支援も必要でしょう。そして多額の費用もかかります。
廃院時に必要な費用としては、登記や手続きにかかる費用、医療機器の処分にかかる費用、建物の取り壊しあるいは原状回復にかかる費用、スタッフの退職金や解雇に伴う手当の支払い等が挙げられます。
したがって、廃院は最終的な選択肢としておくことをお勧めします。
メリット
- 継続的な運営コストや財務的なリスクから解放される
- 経営のストレスや責任から離れ、新たな人生のステージに進むこともできる
デメリット
- 長年に渡って築き上げてきた患者との関係を失い、地域社会においても影響を受けることがある
- 資産の処分やスタッフの解雇等が必要であるため、経済的な負担や法的義務が生じる
- 自身で築いた事業を閉じる決断には精神的なストレスが伴うことが多い
歯科M&Aの動向
日本歯科医師会の調査にある通り、昨今は歯科医師の高齢化と後継者不在のために、歯科医療提供が困難になっている地域の増加が見受けられます。
こういった背景もあり、今後も歯科医院におけるM&Aの重要性は高まることが予想されます。
その他にもここ数年の動向として挙げられているのは次の通りです。
大手・外資系の参入
大手医療法人が、中小規模の歯科医院を買収するケースが多く見られます。これにより業務の効率化やサービスの質向上が図られていますが、一方で地域密着型の小規模医院の減少も見られます。
また外国の投資ファンドや医療機関が、日本の歯科市場に進出するケースも増えているようです。これは日本の歯科市場は安定していると見られているためで、特に超高齢社会が進む日本で、高齢者向けの歯科サービスの需要が高いことも背景にあるようです。
最新技術を取り入れた歯科医院は高く評価される
最新の歯科技術を取り入れた歯科医院は、M&A市場においても高く評価されています。
例えば業界の最新機器やデジタル診療等を導入済みの歯科医院は、患者体験の向上と業務の効率化が進んでいることが多いため、高く評価されると考えられます。
地域ニーズに対応したM&A
特定の地域のニーズに対応した歯科医院の買収や合併も比較的多く見られます。
例えば高齢者の多い地域では訪問歯科の需要が高まるため、買収して自院の利益とできるようにしたり、合併して規模を大きくしたりすることが多いようです。
まとめ
経営者であれば、自院の今後について悩む機会は多いでしょう。そのうちの1つの選択肢が歯科M&Aです。歯科M&Aが適切な形で行われれば、歯科医院のサービスを拡大し治療技術を革新しながら、患者満足度も向上させることができます。
将来的に自院のM&Aが視野に入っているのであれば、先述の通りデジタル診療等最新技術を取り入れている歯科医院は評価されやすいです。歯科M&Aの話を除いても、現代の歯科医院経営においてDX化は不可欠であるといっても過言ではありません。
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