歯科で使える助成金は?各制度と支給要件・金額・申請方法について解説
歯科における助成金制度の活用は、人材の確保や医院の成長、新しい技術の導入などに寄与します。財政的な困難に直面しても、助成金を上手く活用することで乗り越えられるかもしれません。
本記事では、歯科で使うことができる助成金の種類とその支給要件、申請方法などを解説します。
目次
歯科における助成金と補助金の違い
「行政から経済的支援を受ける」という意味では助成金も補助金も同じですが、厳密には管轄や財源などが異なります。
助成金 | 補助金 | |
主な目的 | 雇用の増加・人材育成 | 事業内容に関すること |
募集時期 | 随時申請可能 | 年に1〜3回ほど |
支給される確率 | 要件が合えば支給されることが多い | 他の希望者(他院)との審査になるため支給されないこともある |
財源 | 雇用保険料 | 税金 |
申請の流れ | 1. 公募開始 | 1. 公募開始 |
管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省あるいは地方自治体 |
歯科における助成金制度と支給要件・金額・申請方法
歯科で使うことができる助成金制度は、主に以下の通りです。
- 人材確保・キャリア支援・雇用に関する助成金制度
- 人材開発支援助成金
- 人材確保等支援助成金
- 働き方改革支援助成金
- 産前産後・育児・介護休業に関する助成金制度
- 両立支援等助成金
- 働くパパママ育休取得応援奨励金
- 男性の育児休業取得促進奨励金
例えば日本歯科衛生士会の令和2年勤務実態調査によると、歯科衛生士は99%が女性であるとされています(参考:https://www.jdha.or.jp/pdf/aboutdh/r2-dh_hokoku.pdf )。
女性は結婚により専業主婦となったり、妊娠・出産・育児により休職・退職を余儀なくされたりすることがあります。
上記の助成金制度はいずれも人材や雇用に関する制度ですが、特に後者の「産前産後・育児・介護休業に関する助成金制度」は、女性比率の高い歯科医院において活用すべき制度でしょう。
人材確保・キャリア支援・雇用に関する助成金制度
まず、歯科医院における人材確保に役立つ助成金制度をご紹介します。
トライアル雇用助成金
「育児などにより長期間休業していた、ブランクがある歯科衛生士」「人柄は良さそうだが実務経験が不足している歯科助手」などを試行(トライアル)雇用するときに活用できる助成金制度です。
これにより求職者の早期就職を支援し、雇用機会を充実させることができます。なお試用期間後は無期雇用契約へ移行することを前提とする必要があります。
一般トライアルコース
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件すべてを満たすこと
- 支給金額:1人あたり月額最大40,000円
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
キャリアアップ助成金
この助成金制度は、常勤(正社員)以外の労働者に対する待遇を改善するためのものです。目的によってコースがいくつかありますが、そのうちの2つを解説します。
正社員化コース
文字通り、雇用期間に限りのある労働者が、常勤あるいは正社員、無期雇用の正社員になることを促すものです。歯科医院は、常勤になる前の6ヶ月間の賃金から、常勤になった後の6ヶ月間の賃金を3%以上増額させる必要があります。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(27ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:常勤になる前の雇用形態や、労働者の家庭状況等により支給金額が異なります。
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
諸手当制度等共通化コース
常勤(正社員)向けの賃金等に関する制度を、そうでない労働者に対しても適用したり新たに作成したりするときに活用できるものです。例えば同じ業務内容であるにも関わらず、常勤であるかそうでないかによって支払われる賃金や手当が異なるというのは、労働者の不満につながります。そういった悩みや格差を解消するときに活用できます。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(59ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:勉強会等に要する休暇の長さや、それらが終了した後に賃金を増加させるかどうかで支給金額が異なります。
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
人材開発支援助成金
「スタッフには休暇を取ってでも勉強会や講習会に参加してほしい」というときに活用できる助成金制度です。職務に関連した専門的な知識・技術を習得させるためのセミナー等を実施した際に、受講料など一部が助成されます。
これにより労働者のキャリアアップを促し、医院としても優秀な人材を維持しやすくなります。コースがいくつかありますが、そのうちの1つを解説します。
教育訓練休暇等付与コース
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(4ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:1人あたり月額最大40,000円
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
人材確保等支援助成金
「スタッフファーストで、スタッフが働きやすい歯科医院にしたい」というときに活用できる助成金制度です。この助成金制度は、魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を行う事業主に対して適用されるものです。
内容によってコースがいくつかありますが、そのうちの2つを解説します。
雇用管理制度助成コース
雇用管理制度(諸手当等制度、研修制度など)の導入により、労働者の働く環境改善を行う事業者を対象としたものです。働く環境改善の計画を立て、その通りに実施し、医院の規模に応じた離職率の目標値を達成することで支給が行われます。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件すべてを満たすこと
- 支給金額:570,000円
- 申請方法:各都道府県の労働局あるいはハローワーク、支給申請窓口への申請が必要です。
人事評価改善等助成コース
人事評価制度を整え、医院全体の生産性向上や賃金上昇、離職率の低下を図る事業主を対象としたものです。
適切な業務・行動をしているスタッフでも、上司や院内の人間関係等により正当に評価されないことがあります。そういったスタッフは労働意欲が低下し離職につながるため、この助成金制度はそういったことによる人材不足を解消することを目的としています。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(5ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:800,000円
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
働き方改革支援助成金
こちらも「スタッフファーストで、スタッフが働きやすい歯科医院にしたい」というときに活用できる助成金制度で、「不要な時間外労働を削減したい」「スタッフには積極的に年次有給休暇を取得してほしい」と取り組む事業主を支援するものです。
労働時間短縮・年休促進支援コース
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件すべてを満たすこと
- 支給金額:設定した目標の内容や達成状況により支給金額が異なります。
- 申請方法:交付申請書に記入し、労働局雇用環境・均等部に提出する必要があります。
産前産後・育児・介護休業に関する助成金制度
次に、女性の多い歯科医院で活用できる出産・育児に関する助成金制度をご紹介します。
歯科衛生士や歯科助手は女性であることがほとんどですが、勤務医は男性であることもしばしばあるため、男性が対象となる育児に関する助成金制度も併せて解説します。
両立支援等助成金
「仕事と家庭の両立を目指すスタッフが働きやすい歯科医院にしたい」というときに活用できる助成金制度です。
出生時の両立支援から不妊治療に取り組むスタッフへの支援、育休時の支援、介護休業を取得するスタッフへの支援などさまざまなものがあります。
出生時両立支援コース
雇用管理制度(諸手当等制度、研修制度など)の導入により労働者の働く環境改善を行う事業者を対象としたものです。働く環境改善の計画を立て、その通りに実施し、医院の規模に応じた離職率の目標値を達成することで支給が行われます。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(5ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:何人目の子ども出生時に適用するかなどによって支給金額が異なります。
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
不妊治療両立支援コース
歯科医療従事者は、一度国家資格を取得すると定期的な更新などは不要であるため、年齢に関わらず長く勤めることができます。
その中には、陰ながら不妊治療に取り組むスタッフがいることも珍しくありません。そういったスタッフにも働きやすい環境を提供するための助成金制度です。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(5ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:不妊治療に取り組むスタッフに対して、職場の環境整備をしたり休暇を取得させたりした場合は300,000円、長期休暇を取得させた場合も同じく300,000円が支給されます。両方の条件を満たせば併用することも可能です。
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
育児休業等支援コース
出産後も働きながら育児を続けたいとするスタッフを支援するためのコースです。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(6ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:300,000円
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
介護離職防止支援コース
例えば両親の介護があるスタッフなどに対して、退職ではなく休職という形を取ることで職場復帰をしやすくしたり、仕事と介護の両立を支援するための助成金制度です。
- 支給要件:厚生労働省が定める複数の要件(7ページ)すべてを満たすこと
- 支給金額:介護に取り組むスタッフが介護休業を取得した場合は300,000円、職場復帰を果たした場合も同じく300,000円が支給されます。
- 申請方法:厚生労働省のホームページから、インターネット上で申請を行うことが可能です。
働くパパママ育休取得応援奨励金
働くパパが育児に参加しやすいよう支援したり、働くママが仕事を続けられるようサポートしたりする制度で、東京都独自の制度です。
- 支給要件:東京都が定める複数の要件を満たすこと
- 支給金額:設定したコースにより支給金額が異なります。
- 申請方法:申請書に記入し、東京しごと財団に提出する必要があります。
歯科における補助金制度
先述の通り助成金制度と補助金制度では内容に差があるものの、「歯科医院の経営を支援する」という目的は同じです。そのため、歯科医院が利用できる補助金制度も併せていくつかご紹介します。
創業者向け補助金
新しい事業を始めようとしている創業者向けの補助金制度で、全国の各都道府県・市区町村がそれぞれ独自の制度を展開しています。
例えば東京都江東区では、江東区内で歯科医院を開業する場合、物件の賃料の一部を補助するという制度を展開しています。
また神奈川県川崎市では、歯科医院開業時の代表者が「女性」「30歳未満」「50歳以上」のいずれかであれば融資を行う、という制度を展開しています。
IT導入補助金
文字通りITツールを導入する際に受け取れる補助金で、導入するITツールの内容によって補助金額が異なります。
歯科医院では、インターネット上で予約できるシステムを導入したり、決済ソフトを導入したりと、患者様の満足度を高めるためにITツールを導入する機会が多く考えられます。
ただ導入にかかる費用や、導入後のサブスクリプション費用を負担に感じることもしばしばあるでしょう。そういった際に活用してみてください。
ものづくり補助金
公式サイト:https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
歯科医院の経営は数十年単位であることも多く、その間に国の制度が大きく変わることがあります。
例えば近年では働き方改革や賃上げ、インボイス制度導入などがありました。経営者がこれらに対応しつつ、生産性も向上させていくための設備投資等を支援する制度です。
歯科での具体例としては、3Dプリンターや歯科用CTなどの導入時に利用することができるでしょう。
事業承継・引継ぎ補助金
経営者の加齢等により、事業継承を行う歯科医院は多くあります。ただ継承したくとも後継者が見つかっていない歯科医院も少なくありません(参考:https://www.ma-cp.com/topics/426.html )。
かといって継承を受ける側も、検討する際には周辺の調査を行なったり新たに設備投資が必要になったり、さまざまな委託費がかかったりします。そういった際の費用を支援するのがこの制度です。
まとめ
歯科における助成金は、医院の経済的負担を軽減します。助成金制度を活用することで、最新の技術やデジタルツールの導入が可能となり、より効率・効果的な業務が実現します。
特にデジタルツールの導入は、医院だけでなく患者の満足度も大幅に高めることができます。Apotool&Box for Dentistは、歯科に特化して開発された業務管理システムで、「稼働率を上げたい」「スタッフの負担を減らしたい」「キャンセル率を減らしたい」といったお悩みを解決します。
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