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歯科技工士は不足中?診療や歯科医院への影響や歯科技工士の将来性について

コラム

現在、歯科業界において歯科技工士不足が大きく問題視されています。歯科技工士が不足すると、歯科医院の診療には直接的な影響が及びます。本記事では、歯科技工士の不足がなぜ生じているのか、それが診療や医院にどのような影響を与えているのかを深掘りします。

歯科技工士不足の現状

歯科技工士は補綴物の製作が主な仕事で、具体的には以下のような補綴物製作に関わることが多いです。

  • クラウン・ブリッジ
  • 義歯
  • インプラント
  • 矯正装置
  • マウスピース
  • エピテーゼ※

※エピテーゼは、先天的あるいは後天的に失った顔面や身体の一部を補うためのものです。保険適用のエピテーゼ製作は義肢装具士が行いますが、歯科技工士が普段行う業務と共通するものも多いため、自費のエピテーゼ製作は歯科技工士が行う場面もあります。

まずは、歯科技工士不足の現状を歯科医療振興財団による衛生行政報告をもとに解説します。

就業割合はここ10年間右肩下がり

2018年に行われた衛生行政報告では、歯科技工士の免許を持っている者は120,157人ですが、そのうち歯科技工士として業務に従事している者は34,468人であるとされています。つまり、就業割合はわずか28.7%です。

本報告は2000年から2年ごとに行われていますが、歯科技工士の免許登録者数は毎年増加し続けているにも関わらず、就業割合については2000年が41.0%で、その後減少の一途をたどっています。

歯科技工所数・規模の推移

2018年に行われた衛生行政報告によると、歯科技工所は年々増加傾向にあり、21,000軒を超えています。

しかし、そのうち16,102軒は歯科技工士が1人のみの歯科技工所でもっとも多く、2,604軒は歯科技工士が2人の歯科技工所とされています。在籍する歯科技工士が5人を超える歯科技工所は、全体のわずか0.04%程度に留まります。

歯科技工士の男女比

2018年に行われた衛生行政報告では、歯科技工士34,468人のうち27,658人が男性と、およそ8割を占めています。

未だ女性の歯科技工士というのは少数派といえますが、2年ごとの報告で女性の歯科技工士数は毎回少しずつ増加しています。

歯科技工士不足の原因

歯科業界で歯科技工士不足が叫ばれる原因はいくつかありますが、特に大きな要因として考えられるものをご紹介します。

歯科技工士の働き方改革

歯科技工士不足が叫ばれる一つの理由として、長い労働時間があります。最新の3Dプリンティング技術等が出てくるまでは、基本的に歯科補綴物はすべて歯科技工士による手作業で作製されていました。

そのためやむを得ず長時間労働となっており、世間や一般企業等では「働き方改革」が行われても、反映されづらい環境だったと考えられます。また長時間労働に対して高収入というわけでもないため、他の職種への転職や離職が進んでいったとも推測できます。

歯科技工士学校数・入学者数の減少

これは歯科技工士に対する考え方が変化した結果ともいえるものですが、歯科技工士を輩出する歯科技工士学校も年々減少しています。

全国歯科技工士教育協議会による調査によると、1995年には72の歯科技工士学校と3,199人の入学者がいたのに対して、直近の2020年は47校、1,003人の入学者となっています。なお調査当初の1991年から直近の2020年までの29年間、歯科技工士学校数が増加したことはありません。

歯科技工士の高齢化

歯科技工士不足が叫ばれるもう一つの理由として、歯科技工士の高齢化があります。

同じく歯科医療振興財団による衛生行政報告では、50歳以上の就業歯科技工士の割合は、2018年についに50.0%に達しました。60歳以上の歯科技工士だけで8,289人いるのに対し、歯科技工士学校を卒業して10年間ほどの29歳以下の層は、わずか3,726人しかいないことがわかっています。

歯科技工士不足による歯科医院・診療への影響

歯科技工士が不足すると、医院には具体的にどういった影響が出るのでしょうか。

治療に遅れが生じる

まず考えられるのは、歯科技工士の不足により、各補綴物の作製・納品に時間を要し治療の終了が遅れます。これにより患者の満足度低下や、不満・クレームにつながる可能性も考えられます。

また補綴物のセットが遅れることで、その間患者は仮のもの(TeC等)の使用を余儀なくされます。その期間が長くなればなるほど、患者の食事や会話に影響が出やすくなり、QOLの低下につながることも考えられます。

治療の質の低下

補綴物の精度は、治療の質に直接影響します。近年歯科技工においてもデジタル化やAIの導入が進んでいますが、時に人間が職人技をもって製作するものを超えられないことがあります。

歯科技工士を雇用できない、あるいは外部委託先である歯科技工所の人員が足りていないからといって安易にデジタル機器に頼ると、技工物の品質が変わってしまう可能性があるということです。

売上への影響

上記のような理由により治療期間の延長や再治療が必要になると、追加の人件費や材料費が発生し医院の利益を圧迫することがあります。

また患者の満足度が低下し紹介につながりにくくなったり、良くない口コミを書かれてしまったりすることで、新患数が減少することも考えられます。

スタッフの負担・ストレス増加

医院で歯科技工士を雇用しており、院内でも歯科技工士の不足が見られる場合は、他の歯科技工士に負担がかかります。

これにより技工物の管理を行う歯科衛生士や歯科助手にも影響が出たり、さらなる人材の流出につながったりする可能性もあります。

歯科技工士の将来性

高齢社会が進むなかで、義歯やその他歯科補綴物の需要は増加し続けることでしょう。その点を踏まえると、歯科技工士には将来性があるといえます。

実際の現場では、デジタルでは対応しきれない、人間の歯科技工士による精密な手技が重宝される場面もあります。しかしデジタル技術も多く参入してくる中で、デジタル技術を受け入れ共存する姿勢が重要であることも忘れてはいけません。

なお歯科医療振興財団による衛生行政報告によると、歯科技工士の就職先は歯科技工所がおよそ7割を占めています。

就職先としては他にも病院・診療所や事業所、歯科技工士学校等がありますが、病院・診療所の歯科技工士数は年々減少していっており、事業所や歯科技工士学校に勤務する歯科技工士はほんの少数です。

そして先述の通り、全国の歯科技工所のうちほとんどが小規模の歯科技工所です。歯科技工士が1〜2人といった歯科技工所は、数としては多くあっても人員の入れ替わることがほとんど無いため、就職先として出てくる歯科技工所のほとんどは中〜大規模の歯科技工所であると考えられます。

歯科医院は歯科技工士不足にどう対応していくべきか

歯科技工士不足は、歯科医院の診療の質や業務効率に影響を与えています。そのため歯科医院では、院内で歯科技工士不足が生じた際、まず既存のスタッフのフォローを図ることが重要です。必要に応じて外部の歯科技工所と連携することで、自院に足りていない部分を補い、治療の質を保持することが可能になるでしょう。

また新たに歯科技工士を雇い入れたい場合は、職場環境の見直しを行なったりより魅力的な雇用条件を提供したりして、スタッフの定着を目指しましょう。

まとめ

歯科技工士は近年減少を続けており、歯科医院の運営に少なからず影響を及ぼします。歯科技工士不足は、歯科業界にとって大きな課題の一つといえるでしょう。

しかし、歯科技工士を目指している方にとっては売り手市場であることに加え、将来性も高いことは魅力的な側面もあるといえます。

一方、歯科医院経営側からすると、歯科技工士不足に具体的な手を打つことは難しいかもしれません。しかし、デジタルツール導入によりこれらの課題を解決できることがあります。

例えば、Apotool&Box for Dentistには技工物管理機能が標準搭載されています。技工物の発注〜納品状況の確認や、技工物がある患者様のリスト作成、メッセージ送信などが可能なため、管理業務の効率化・精度向上を期待できます。

またデジタルサブカルテ機能「Medical Box Note」を活用すれば、歯科技工士との連携がよりスムーズになり、人手が不足している中でも効率良く医院を運営することができます。

ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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