歯科助手はすぐ辞める人が多い?その理由と転職・離職率を下げる方法
歯科助手の高い転職・離職率に、多くの歯科医院が悩んでいることでしょう。歯科助手の離職率が高いと、歯科医院の運営に悪い影響を及ぼし、患者の対応やケアの質にも影響を与えかねません。
本記事では、歯科助手の離職率が高くなる理由を詳しく掘り下げ、具体的な解決策を提示します。これにより歯科助手の満足度を高め、長期的なスタッフ定着を実現する方法を検討しましょう。
目次
歯科助手ですぐ辞める人が多い理由
歯科助手ですぐ辞める人が多い理由として、以下のようなものが挙げられます。
- 給料が低い
- 人間関係が良くない
- 院長と価値観が合わない
- 人材不足で忙しい
- 実質的な労働時間が長い
- 休みが少ない・取りづらい
- 違法行為・歯科衛生士業務を強要される
それぞれ詳しく見ていきましょう。
給料が低い
歯科助手の給料は、歯科業界内で見ると平均を下回っているのが現実です。歯科業界内には歯科医師や歯科衛生士も含まれるためです。特に生活費のかかりやすい都市部で低い給料であると、生活に不満を感じやすく他の職種や他院への転職を検討する理由となります。
参考:歯科助手の年収・時給
人間関係が良くない
歯科助手同士や歯科助手と歯科衛生士など、歯科医院内の人間関係は職場全体の雰囲気を大きく左右します。多くの歯科医院は小規模であるため、一人ひとりの人間関係が職場全体に影響を与えやすいのです。これによりストレスを感じ、転職を考える理由になることも少なくありません。
院長と価値観が合わない
医院によっては歯科助手の業務が多岐に渡り、さまざまな仕事を任されることがあります。
院長と話し合いが必要なときに考え方や価値観が合わず、かつ歯科助手側の意見を通してもらえないことが続くと、仕事へのモチベーション低下につながります。これにより「もっと理解してもらえる院長がいる医院で働きたい」等、他院への転職を検討する理由となることがあります。
人材不足で忙しい
歯科助手あるいは歯科衛生士の人手不足により、残された歯科助手の業務量が過剰になることがあります。決して珍しいことではなく、多くの医院で起こり得ることです。これにより過労やストレスを感じ、職場環境への不満から転職につながることがあります。
実質的な労働時間が長い
契約書上は適切な労働時間であっても、実質的には時間を超過していることがあります。
例えば以下のようなシチュエーションは、どの医院でも起こり得ることでしょう。
- 診療開始は9:00だが、準備やユニット立ち上げのために8:30には出勤しなければならない。かつ医院についてから着替えたり、髪を結んだりしなければいけないため、8:10には医院に到着していないといけない
- 歯科助手の出勤時間は8:30だが、来月のミーティングで発表する資料作成のため7:30に出勤するあるいは終業後自宅に持ち帰って2時間作業する
- 昼休憩は12:00〜13:30だが、13:30予約の患者さんの準備のために、13:00には休憩を切り上げて外来に出る など
残業代は支給されることがあっても、朝早く出勤した分や昼休憩を削った分は、給料として反映されないことがほとんどです。これにより不満やストレスが溜まり、転職の理由になることがあります。
休みが少ない・取りづらい
シフト制により休日が不定期であることや、休暇が取りづらい職場環境も歯科助手の離職率を高めます。
歯科業界は、平日5日間働けば毎週必ず2連休となる一般の会社員とは異なります。平日に1日、週末に1日と休診日を分散している医院が多いため、基本的にそこで働く歯科助手には連休がありません。
連休が無いと旅行はもちろん、ちょっとした遠出も難しくなりがちです。これにより友人と予定が合わなかったりリフレッシュができなかったりし、歯科助手の精神面に影響を与えることがあります。
違法行為・歯科衛生士業務を強要される
一部の歯科医院では、資格のない歯科助手に対して歯科衛生士業務を行わせることがあります。このような違法行為は、歯科助手の職場に対する信頼感を損ねるだけでなく法的なリスクも伴うため、他院への転職につながりやすいです。
歯科衛生士業務を任された歯科助手は、断れないことが多いでしょう。院内に余裕があり、上司や歯科衛生士に相談できる環境であれば避けられるかもしれませんが、多くの場合は「他の患者さんを待たせているから」「歯科衛生士が足りていないから」等、院内に余裕が無い状況で任されるものです。
歯科助手の転職・離職率を下げる方法
では歯科助手の転職や離職率を下げるには、具体的にどういった手を打つべきなのでしょうか。7つの方法を詳しく解説します。
適正な給料・給与体系にする
歯科助手に対して適正な給料を支払うことは、離職率を低下させるための基本です。給料に関する市場調査を行い、同じ地域の給与水準に基づいて、公正かつ競争力のある給与体系となるようにしましょう。
例えば歯科助手としての経験や能力、職務の遂行度に応じて昇給したり、歯科衛生士と同様ボーナスがもらえるようにしたりすることで、モチベーション維持と職場に対する忠誠心の向上が期待できます。
給料は単なる金銭的報酬以上の意味を持ちます。具体的には、歯科助手自身が「自分は院長あるいは医院から評価されている」と感じる重要な指標ともなります。逆に言えば、院長としてはやむを得ず低い給料になっていても、歯科助手は「自分は必要とされていないんだな」と感じてしまうことがあります。
職場環境を改善させる
職場環境が改善されると、歯科助手は「毎日働く場所=快適な場所である」と感じることができます。
転職につながりやすい職場環境として、代表的なのは人間関係やコミュニケーションに関するものです。院内のコミュニケーションを促進し、オープンでサポートを得やすい文化を構築することが重要です。
職場内のトラブルやハラスメントに対処する明確なガイドライン・対策を設けることも、健全な職場環境や人間関係を保つためには欠かせません。
またそれ以外にも、院内の照明や気温・温度、必要機材の整備、作業スペースの確保など、すぐにできる物理的環境の改善でも快適さを感じてもらうことができます。
福利厚生を充実させる
福利厚生の充実は、歯科助手が一度転職を考えても、結果的に離職せず職場に留まる重要な動機の一つとなります。具体的には健康保険や退職金制度、育児休暇や介護休暇の保証、研修や教育プログラム等です。
これらの福利厚生は、歯科助手が安心して長期間にわたって勤務できる環境を提供し、職場の満足度を高めることができます。また福利厚生を通じて歯科助手の生活やプライベートの質を高め、職場外でのストレスを軽減させることも、職場への忠誠心を保つためには欠かせません。
福利厚生の充実は、すでに働いてくれている歯科助手はもちろん、これから新しく入ってくる歯科助手にも魅力的に映ります。
医院の方針に共感できる歯科助手を採用する
さまざまな工夫を凝らしても、「歯科助手は辞める人が多い」と感じてしまうことがあります。これは工夫が足りていないのではなく、そもそも医院の方針に合っていない歯科助手を採用してしまっているからかもしれません。
具体的には、採用を検討する段階で歯科助手には以下を明確に伝え、それに共感してくれる候補者を選ぶことが重要です。
- 医院全体の理念・目標
- 治療方針
- 患者への接し方 など
歯科助手の採用面接では、候補者の価値観やこれまでの実績、人柄・話し方等を分析し、それが医院の文化と合致するかを検討します。これによりチームの一員として長く忠実に勤務してくれる歯科助手を選定することができます。
コミュニケーションを強化する
歯科医院におけるコミュニケーションの強化は、職場内のトラブルを最小限に抑え、職場環境を改善することができます。
これを実現するためにまず必要なのは、定期的なスタッフミーティングの開催です。このミーティングでは、例えば以下のような内容について話し合います。
- 日常業務に関する提案・フィードバック
- 院内・職場の問題点
- 個々の成果や課題について など
また全体のスタッフミーティングだけでなく、一対一で行う面談やフィードバックセッションも設けることも重要です。歯科助手の業務への貢献を認めてあげるだけでなく、悩みや懸念、提案を聞き出しやすくなります。
これにより職場内の透明性や安心感が高まり、スタッフ間の信頼を築き上げることにもつながり、結果的に歯科助手の離職率低下にもつながります。
違法行為をさせない
歯科助手が行えるのは、受付業務や事務、滅菌、院内の清掃等、患者の口腔内に触れない行為に制限されています。
チェアサイドでの器材の準備やセメントの練和等は可能ですが、歯科衛生士の代わりに口腔内のクリーニングを行うことやセメント除去やフッ化物塗布、歯磨き指導等を行うことは認められていません。
院長が違法行為を指示していなくても、歯科助手がうっかり違法行為にあたる業務を行わないように注意しましょう。
万が一、歯科助手による診療行為が発覚すれば、院長や医院自体が法的責任を問われるだけでなく、行政指導や罰則の対象になる可能性もあります。これにより、患者からの信頼は失墜し、医院経営にも深刻なダメージを与えることは避けられません。
キャリア構築をサポートする
職場における働く基盤が完成したら、歯科助手が自院で長期にわたり成長し続けることができるよう、継続的なキャリアサポートも検討してみましょう。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 教育プログラムの作成
- 専門的スキルを向上させるための定期的な研修
- 研修受講時のフォロー(交通費全額支給など)
- キャリアアップのための昇進の機会
教育とトレーニングの機会を提供することで、歯科助手は自身のスキルを高め、職場に対してより満足感を得ることができます。また明確なキャリアパスが提供されることで、歯科助手は働く上での将来的な計画を立てやすくなり、モチベーションを保ちやすくなります。
これらの取り組みにより、歯科助手の離職率を下げ、医院全体の安定と成長を支えることができます。
まとめ
歯科助手の高い転職・離職率は多くの歯科医院にとって大きな課題ですが、適切な給料の支給、職場環境の改善、コミュニケーションの強化等により、そのリスクを下げることが可能です。
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