歯科医師国保とは?加入に必要な条件や健康保険との違い、メリットや給付金について解説!
歯科医師国保とは、自営業や個人事業主、フリーランスとして働く歯科医師や、社会保険の適用がない歯科医院に勤務するスタッフ向けの保険制度です。特に院長を務める歯科医師にとって、経営上この保険制度の理解は欠かせません。
本記事では、歯科医師国保に加入するための条件、一般的な健康保険との違い、そして歯科医師国保加入のメリット等について詳しく解説します。
目次
歯科医師国保とは?
歯科医師国保とは、「歯科医師国民健康保険組合」の略称です。つまり社会保険と対を為す国民健康保険(略称:国保)の一種で、院長を含む歯科医師やスタッフが加入できるものです。
もちろんスタッフとしては歯科衛生士や歯科助手、歯科技工士から、受付スタッフ、事務職などまで含まれます。
歯科医師国保への加入に必要な条件
歯科医師国保の加入者は、以下4つに分類されます。
- 1種組合員
- 2種組合員
- 3種組合員
- 家族
なおこれは「全国歯科医師国民健康保険組合」によるもので、支部が置かれていない北海道など一部のエリアでは名称や分類が異なります。
1種組合員
該当の支部所在地の歯科医師会会員である歯科医師で、指定の地区内に住所を有する必要があります。主に院長が対象です。
2種組合員
1種組合員である歯科医師が開設あるいは管理する医院で雇用されている、歯科医師が対象です。同じく指定の地区内に住所を有する必要があります。
3種組合員
1種組合員である歯科医師が、開設あるいは管理する医院で雇用されているスタッフが対象です。同じく指定の地区内に住所を有しており、組合に勤務する者とされています。2種組合員のスタッフ版と捉えるとわかりやすいでしょう。
家族
上記の組合員の家族であれば、組合員本人と同じく歯科医師国保に加入することができます。このときの「家族」とは、「同一世帯に属している者」と定義されています。
つまり、同じ住所でかつ生計を一緒にしている人までが対象です。逆に言うと、戸籍上は家族であっても、異なる住所に住んでいれば対象となりません。
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歯科医師国保と社会保険の違い
社会保険と国民健康保険の分類と対象は下記になります。
分類 | 保険者・名称 | 対象者 |
社会保険 | 組合健保 | 従業員が一定数以上の企業に勤める従業員とその扶養家族 |
協会けんぽ | 主に民間企業に勤める職員とその扶養家族 | |
共済組合 | 公務員や私立学校の教職員とその扶養家族 | |
国民健康保険 | 市町村国保 | 社会保険と後期高齢者医療制度の対象外となるすべての人 |
国保組合 | 特定の職種について、同種の事業または業務従事者とその同一世帯の家族 |
歯科医師国保は、国民健康保険の中の上記のうち「国保組合」に分類されます。国保組合には他にも、「医師国保」や「薬剤師国保」などがあります。
保険料の違い
社会保険では「労使折半」といい、雇う側(例:院長)と雇われる側(例:歯科衛生士)はそれぞれ半分ずつ保険料を負担します。歯科医師国保ではこの制度がありません。
そのため歯科医師国保を適用する医院によっては、雇われる側が全額保険料を負担しなければいけないこともあります。
また社会保険や、同じ国民健康保険でももう一方の市町村国保では、所得金額によって保険料が変動します。それに対し歯科医師国保では、保険料が一律です。つまり先述の1種組合員、2種組合員など、同じ組合員資格内では、所得に大きな差があっても保険料は同じです。
扶養の違い
社会保険でよく耳にする「扶養」という概念は、国民健康保険にはありません。これは歯科医師国保においても同様です。
例えば夫と妻、子ども2人の4人家族である場合、社会保険であれば夫1人分の保険料で4人ともサービスを受けることができます。しかし、夫が歯科医師国保に加入し妻が専業主婦等である場合は、加入者が4人ということで4人分の保険料を支払う必要があります。
院長にとっての歯科医師国保のメリット・デメリット
院長目線で、歯科医師国保のメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット
- 保険料が一定
- 手当・福利厚生が充実している
デメリット
- 自身の医院では利用できない
- 従業員が4名以下の医院しか加入できない
- 扶養という概念がない
歯科医師国保には、傷病手当金や出産手当金等の制度があります。その他各種予防接種や各種検診の補助もあります。こういった手当や福利厚生の充実を、求人時にアピールすることもできるでしょう。
ただ注意すべきなのは、歯科医師国保は自院の治療には適用されないという点です。そのためスタッフから自院での治療の要望が出た際は、医院側が何割か負担する等対応を求められる可能性があります。
また、歯科医師国保は従業員が4名以下の医院しか加入できません。5名以上になる場合は、社会保険である協会けんぽへの切り替えが必要です。
歯科医師国保による給付金の種類・条件
歯科医師国保の給付金は、以下のように分けられます。
大分類 | 小分類 | 給付内容 |
法定給付 | 絶対的必要給付 | 療養の給付 |
高額療養費 | ||
療養費 | ||
海外療養費 | ||
移送費 | ||
相対的必要給付 | 出産育児一時金 | |
葬祭費 | ||
任意給付 | – | 傷病手当金 |
– | 出産手当金 |
法定給付は法律により定められたもので、任意給付は組合が独自に定めたものです。
法定給付のうち絶対的必要給付に分類されるものは、組合が必ず給付しなければいけないもの、相対的必要給付は特別な理由があるときは行わなくて良いものとされています。つまり、条件によっては給付されないこともあるということです。
それぞれの給付金を詳しく解説します。
療養の給付
歯科医師国保に加入している方が病気やけがで医師の診療を受けた場合、かかった医療費の自己負担分を除いた金額が給付されます。一般的な社会保険と同様、医療費のうち7割が給付されるため、自己負担額は3割で済みます。
また家族として歯科医師国保に加入している場合は義務教育就学前まで、加えて一部の高齢者は8割が給付されるため、自己負担額は2割で済みます。
高額療養費の給付
1ヵ月間に支払う医療費が一定額を超えた場合、その超過分が給付される制度です。「一定額」とされる金額は所得や年齢によって異なります。
また支払った医療費が21,000円を超えた場合は、世帯全体でかかった医療費を合算して申請書に記入することができます。
療養費の支給
「療養の給付」と似ていますが、内容としてはほとんど同じです。医療費を3割負担とするためには、医療機関の窓口で保険証を提示する必要がありますが、保険証を忘れてしまったり、やむを得ず歯科医師国保の該当でない医療機関にかかったりしたときに利用できる制度です。
保険に加入していることを証明できない、あるいは対象外の医療機関となるため、その日は一旦窓口で医療費の全額を支払う必要があります。その後指定の申請書を組合へ提出すれば、現金で払い戻しを受けることができます。
海外療養費の給付
海外にいるときに病気やけがをした場合に、その治療費の一部が給付される制度です。条件としては、海外での治療が必要不可欠であったことが挙げられます。支給される金額は、国内で同様の治療を受けた場合の費用を基準に算出されます。
移送費
療養の給付などを受けるために移送された場合も、移送代として給付を受けることができます。同じく申請書を提出する必要があります。
出産育児一時金の給付
歯科医師国保加入者が出産した場合、1児につき500,000円が給付されます。これには妊娠4ヶ月以上の死産・流産も含まれます。なお、適用対象となるには出産の時点で歯科医師国保の加入者であることが条件です。
また出産にかかる医療費は比較的高額であるため、受け取り方法は2つあります。
- 直接支払制度
- 受取代理制度
前者は、医療機関(出産を行う産婦人科等)が直接歯科医師国保に申請を行い、出産育児一時金も歯科医師国保が直接医療機関に支払うという方法です。
つまり出産にかかった医療費が500,000円以内であれば、当人が退院時に窓口へ費用を支払う必要がありません。もし500,000円以上の医療費がかかった場合は、その差額を窓口で支払います。
後者も似ていますが、違いは歯科医師国保の加入者が、あらかじめ医療機関を「出産育児一時金の受取代理人」として申請するという点です。
これにより、出産育児一時金は同じく歯科医師国保から直接医療機関に支払われるため、出産にかかった医療費が500,000円以内であれば、退院時に窓口へ費用を支払う必要がありません。この制度を導入している医療機関でのみ利用可能です。
葬祭費の給付
歯科医師国保の加入者が死亡した場合、その方の葬祭を行う者に給付されます。
死亡した方の区分 | 給付額 |
1種組合員 | 300,000円 |
2種組合員 | 150,000円 |
3種組合員 | 100,000円 |
1〜3種組合員の家族 | 100,000円 |
後期高齢者組合員の家族 | 100,000円 |
他の給付金と同じく、申請書とその他書類を提出する必要があります。
傷病手当金の給付
歯科医師国保加入者が入院した際、必要に応じて申請書を提出することでその日から以下の金額が給付されます。
入院者の区分 | 給付額 |
1種組合員 | 4,000円/日 |
2種組合員 | 1,500円/日 |
3種組合員 | 1,500円/日 |
出産手当金の給付
産前6週間、産後8週間の期間において、休暇を取得し職場復帰しなかった加入者に対して、1日あたり1,500円が給付されます。同じく申請書や書類の提出が必要ですが、傷病手当金との併用はできないため注意が必要です。
まとめ
歯科医師国保とは何か、そして院長にとってのメリットとデメリットをご紹介しました。歯科医師国保は、自身の家族構成や自院の体制等によって、効果的に活用できるかどうかが決まります。
自院でこの保険制度を最大限に活用できるかどうか、ぜひ検討してみてください。
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